<上海>ルーズベルト・ステーキハウス、すべて最上級の喜び

 商品が売れない、売れない時代になったが、売れ筋商品もたくさんある。ストーリーの付く商品は、どうやら売れやすい。米ルーズベルト元大統領の孫が、上海に出した高級ステーキハウスで、一人1000元くらいのステーキを食べる、というバブリーな体験はいかが?

 昨日、上海シガー倶楽部の第4回定例会が、「ルーズベルト プライム・ステーキハウス」であった。会費は、一人1000元(食事と飲料のみ、シガーは別途各自持参)と高めだが、参加者全員が満足そうだった。

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28080_2今回シガー倶楽部会食の会場

 場所は、閑静な高級住宅街・太原路、太原別墅に位置し、近くには、マーシャル邸を控え、セレブなムードが漂う。

 いざ、レストランの中に入ると、イメージしていたバブリーさがほとんど感じられない。高級だが、決して浮いてはいない。いかにも、アメリカっぽい重厚感がずしん~と伝わってくる。本革のソファーから発せられるレザーの香りが心を豊かにしてくれる。

 私たちのシガー倶楽部定例会は、今回個室を使わせてもらった。ゆったりした個室には、シャンデリア、風景の油絵、そして、木造の大きなテーブル、地味だが重厚感に満ちたラグジュアリーが印象的だ。

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 本日のメニューは、ひとくちアペタイザー、スープ、サラダ、試食ひとくちサーロンインステーキ、フィレステーキ(250g程度)、マカロニとかなりのボリュームだ。アメリカンサイズでとにかく肉は大きい。本日のフィレは、このレストランでも最小サイズだそうだ。アメリカ人なら、500グラムや600グラムのステーキはペロッと平らげてしまうが、日本人は、肉をスムーズに消化する体質になっておらず、200グラムから300グラムでかなりの満腹感を得られる。しかも、和食の満腹感と異なる種のもので、とにかく、ヘビーなのだ。だからこそ、肉を食したあと、体がシガーを渇望するわけで、シガーの旨さが格別なものになる。

 フィレは、最高の味だ。日本で同じようなコースになると、3万円は超えるだろう。上海ならではのプライスと品質だ。

 昨今、黒毛和牛が日本国内でも海外でも、もてはやされている。日本人も、中国人も、サシの入る肉を好む傾向がある。そのため、黒毛和牛が肥育されるわけだが、欧米人は必ずしもその種の肉を好まない。ブラックアンガス(Black Angus)種などは、好例だ。

 プライムを使っているだけに、やはり品質の高さを実感する。サシの少ない上等な肉は、脂肪の存在をほとんど感じさせない。

フィレを、私は、ちびっと、ブラックペーパーソースをつけるだけで、口に運ぶ。和牛のとろけ感がほとんどない。一瞬にしてライオンにでもなったような錯覚に陥る。野獣には牙(きば)で獲物の肉を切り裂く喜びがあるだろうが、牙のない人間はナイフを使う。ライオンになった錯覚とは、擬似牙が生えた錯覚である。

 食器を介在して、食べ物を取る人間には、野性の本能が蘇るときがある。寿司を手に取って食すのも同じだ。その喜びは、人間の自然体の復活でもある。

 フィレを半分食べた時点で、私は、ソースを完全にやめた。ソースは、人工的で野性の喜びと相殺するからだ。次回は、岩塩と上等なわさびを持参しようと思った・・・

28080_41943年 11月、中華民国蒋介石総統と米ルーズベルト大統領、英チャーチル首相がカイロ会談にて(ウィキメディア写真)

 1943年、蒋介石中華民国総統、ルーズベルト米大統領、チャーチル英首相が参加してカイロ会議が開かれ、戦後に日本は台湾の統治、主権を放棄し、台湾を中国に返還すると三国が一致して決定したという史実がある。そして、66年後の今日、ルーズベルト氏の孫が中国のここ上海に、ステーキハウスを作り、また、敗戦国日本の小市民たちが、ここで美食を楽しんでは、チャーチル氏の大好きな葉巻をふかす・・・

 めぐりめぐった歴史、土に還った偉人たちも、さぞ後世の出来事には想像も付かず、一笑に付すか、それとも羨むことだろうか。

 吾が輩は、誠に幸せである。

★ルーズベルト・プライム・ステーキハウス(Roosevelt Prime Steak House)
<住所>   上海市太原路160号太原別墅
<電話>   021-6433-8240
<営業>   17:30~23:00
<予算>   800元~1,500元/人