旅(2)~バリ島リッツ・カールトンが消えた理由

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 実は、バリ島のリッツ・カールトンは、今年2009年4月に消え、名前は、「アヤナ・リゾート&スパ・バリ」に改名された。

 バリ・リッツのオーナーは、ずっと変わっておらず、インドネシア人のスリニアワン氏。1991年、彼は、「バリ・リッツ開業後10年間には、バリ島内にリッツ系の第二ホテルを作らない」との条件で、リッツとライセンス契約を結んだ。その当時、リッツの社長は、ホルスト・シュルツィ氏、いわゆるリッツのブランドを作り上げた第一人者だった。

28988_2アヤナ・リゾート&スパ・バリ(旧リッツ・カールトン・バリ)

 しかし、その後、リッツは、マリオット・グループに売却され、マリオット傘下に入り、ホルスト・シュルツィ氏もリッツを離れた。そこで、情況が一変した。2008年、マリオット運営のブルガリがバリ島で開業した。バリ・リッツの顧客名簿もブルガリに借り出され、これは、重大な契約違反だとスリニアワン氏はリッツを米国で提訴し、予期せず全面的に勝訴した。

 裁判所は、信義義務の違反としてリッツ・カールトンに約10億円の賠償金の支払い命令を言い渡した。判決を受け入れ、和解と契約継続を申し出たリッツ・カールトンに対し、リスリニアワン氏はこれを拒否。インドネシア語で「安息の地」という意味の「アヤナ」名で、心機一転して再スタートに踏み切った。

 世界の巨大ホテルグループに屈することなく、法的に戦う一インドネシア人に敬意を表したい。また、勝訴してもリッツ・ブランドを捨てる決意をし、「アヤナ」という民族ブランドを打ち出した一インドネシア人に、もっと大きな敬意を表したい。

 10億円の賠償金は、大きい金額のように見えるが、400室近くの客室と1000人規模の従業員を抱える一巨大ホテルにしてみれば、3~4か月の売り上げに過ぎないだろう。世界ネットワークをもつリッツのブランドを捨てたことで、客足に影響が出ることは目に見えている。10億円の賠償金は、1年か2年の穴埋めになるかどうか・・・しかし、そこで、決意したリスリニアワン氏は、自ら逃げ道を断つ思いだったのだろう。

 中国に目を向けると、ディズニーの上海進出決定で、地上げやら関連株やら、何かと騒がしい。外国ブランドが断然強い中国だが、世界に通用するナショナル・ブランドはいつ出来るのか、特にサービス業、まだまだ道のりは遠い。

 最後に、競合関係とされた「リッツ・カールトン」と「ブルガリ」の客層の違いに触れてみたい。あくまでも私の個人的な意見だが、「リッツ」は、セレブといっても、まあ、小晴れのサラリーマンや中小企業の経営者が奮発して泊まるところで、「ブルガリ」は、本物の百万長者しか泊まれないホテルだ。

 「ブルガリ」に関しては、私は、あまり知識がない。身分不相応の背伸びはしない主義で、興味もない。

 次の旅先は、北海道である。

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