「すべてよしだが終わり最悪」の呪縛、高級ホテルの光と影

 「タクシーを1台お願いします」
 「福州空港まででよろしいでしょうか」
 「はい」
 「分かりました」

 昨日(11月27日)、私は出張を終え、滞在先の福州香格里拉(シャングリラ)ホテルでチェックアウト清算をしながら、ベルボーイにタクシーを頼んだ。

29765_2福州シャングリラホテル

 清算を終え、ホテルの正面玄関を出ると、車寄せにタクシーの空車が1台止まっていた。早速、乗り込もうとすると、ベルボーイに止められた。

 「あの、このタクシーではありません。別のタクシーを用意しましたので、少々お待ちください」
 「別のタクシーって、ホテルのリムジンじゃないよね、私は普通のタクシーで良い」
 「いや、普通のタクシーです。先ほど頼んでおきましたので、すぐに来ます」
 「・・・?」

 しばらく待っても、準備してくれたタクシーは一向に姿を見せない。時間がどんどん経ってしまう。福州空港は、市街地から60キロも離れている。渋滞がなくても1時間ほどかかるから、これ以上待てない私、強行突破で目の前のタクシーに乗り込もうとする。

 「もう、待てない。このタクシーで行く」
 「もう少しで来ますから、ちょっと待ってください」
 「同じタクシーなんだから、いいじゃないか」
 「ちょっと待ってください」

 ベルボーイを振り切って、私はタクシーに乗り込んだ。タクシーが走り出すと、運転手がニコニコしながら、話を掛けてきた。

 「お客さん、私のタクシーとベルボーイの頼んだタクシーは同じじゃないよ」
 「えっ?」
 「運賃は一緒だけど、ベルボーイは彼の呼んだタクシーから、10元から数十元のマージンを取っているのさ」
 「なるほど」

 私は納得した。マージンを取るのを良しとしても、客が飛行機でも遅れたらどうするの、考えていないのかな。顧客に不利益を押し付けての利益、まして不当利益では、ホテルマンとして失格だ。いや、失格よりも、一種の「背任罪」に近いようなものだ。

 シャングリラ、あれだけ立派な国際的ブランドでも、中国でバックマージンの呪縛から逃れることができないのである。悲しい限りだ。

 「終わりよければすべてよし」というが、ホテルなどのサービス業では、サービスの終盤がもっとも重要だ。いかに客を気持ちよく送り出すかによって、リピーターになるかどうかという最終結果につながる。チェックイン良し、部屋良し、食事良し、チェックアウト良し、そして、フィナーレが最悪。あのベルボーイは、同僚たちの努力を踏みにじる形になってしまった。とても残念だ。