本の執筆終了、「中国労働契約法」

 「中国労働契約法」の執筆は、ほぼ終了し、校正に入った。董保華先生との合作で、総計45万文字、700ページに及ぶ著作になる。法律の解説にとどまることなく、立法背景と中国の政治、行政、労働現場について、掘り下げて、なぜこのような法的環境になっているかを立体的に描き出そうと努力した。

 実務書と法律専門書の中間を介した位置づけで、僭越ながらも、中国労働法の邦字書としてベンチマーク的な存在になる、このように期待している(自画自賛をご容赦ください)。

 「労働契約法」以外にも、労働関係の全法令、地方法規その他を網羅しているだけに、法律条文の照合、脚注に膨大な時間と労力がかかった。

 この本は、「Know How」よりも、「Know Why」に重点を置かせてもらった。実務上の小手先よりも、中国労働現場、法的環境、企業人事労務のメカニズムの解明に大きな努力を費やした。

 また、全般的に、「労働契約法」に対して批判的な姿勢が取られていることも否めない。この法律で多くの底辺労働者は決して恩恵を授かっているとは思えない。労働者は搾取を受け続けているし、炭鉱事故が次から次へと連発し、労働者の尊い命が奪われている。

 順法コストを大幅に引き上げられても、違法者、特に確信犯的な悪企業にとって、何ら作用もない。どんな法律だろうと、彼たちは引き続き労働者の搾取を続けるのだ。逆に、順法企業にとっては大きな痛手となっている。

 いま、中国の労働現場では、順法コストが高すぎる一方、違法コストが安すぎるのが問題だ。私が日々、現場の多くの労働紛争案件を取り扱っているが、ときどき泣きたくなるように、無性に悲しくなる。

 立法者が愚かだといえばそこまでだが、各種利益集団の介入で、状況が悪化した。大変残念だ。日系企業の現場では、いまだに、新法に対し完全な理解が欠けている企業も多く見られる。特に、日本本社だ。この本がその辺で少しでも役に立てればと願ってやまない。

 来年の出版を楽しみにしている。

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