誰もが言わないからこそ、誰かが言わなきゃならない

 先週金曜日午後、私の法学博士指導に当たる恩師で、エリス・コンサルティング首席法律顧問の董保華先生を当社に招いて、3時間ほどの打ち合わせを行った。

 董先生は、「中国労働法」(労働契約法ではない)立法諮問首席委員を務め、中国労働法学界の第一人者でもある。多忙を極める董先生は打ち合わせ中でもいったん中断し、外国人の中国社会保険加入完全義務化について、シンガポール「聯合早報」の電話取材を受けた。

64301_2董保華先生と打ち合せ中(2011年9月16日、当社会議室にて)

 「本社出向者まで網羅して、全外国人に中国の社会保険加入を強要する。強奪の法律だ。合理性はどこにもありません。理にかなっていなくても、公権力を動員すれば外国企業はコンプライアンスで最終的に従うしかありません。不合理なことは、1回やって、2回やって、3回やって、10回やって、問題ないかもしれませんが、百回、千回と、永遠にやれるはずがありません。外資はいずれ中国を捨てますよ・・・」

 (このコメントを報道していいかとの質問には)、「どうぞ、私が言ったことで報道していただいて結構です。ぜひ報道してください」

 何と素晴らしいこと。私が思わず拍手を送った。隣に同席の弁護士が、「董先生、誰もが言えない、こんな過激な発言をしていいんでしょうか」と聞くと、董先生は答える。

 「いや、違う。『言えない』じゃなくて、『言わない』。誰もが言わないからこそ、誰かが言わなきゃならないでしょう。この私が言う。嫌われても言い続けます。それよりも、立花君、あなたと一緒に執筆した本(和文)を翻訳(中訳)してもらったよ。君は所々私よりも過激な発言をしているんじゃないですか。ハッハッハッ・・・」

64301_3日本国内店頭に並ぶ董保華・立花聡共著「実務解説 中国労働契約法」

 董先生が言っているのは、「実務解説 中国労働契約法」(董保華・立花聡著・中央経済社)のこと。その序章と終章は完全私一人の執筆で、セミナーでの発言をまとめた内容だった。出版社入稿段階で董先生の検閲を求めたが、「君が考えたことをそのまま書いてかまわない」と言われ、極めて「立花色」の強い内容のままで出版された。

 基本的に、私は董保華先生と非常に近い人生哲学と価値観、そして学術観を共有しているだけに、息がぴったりだ。このようなめぐり逢いは神様からの賜物にほかならない。運命の神様には感謝、感謝、また感謝。

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