中国・ベトナム経営現場における深刻なヒトの問題、根源と解決方向

 中国やベトナムの雇用・労働現場は難しい状況にあり、特に中国では一部末期的な症状を呈している――。

 事実上の解雇不能減給不能降格不能、一部配置転換や業務命令不能……。企業は実質的な人事権をほとんど喪失し、多発する労務トラブルは主に交渉などの法外解決に頼っている。それが個別事案にとどまらず負のスパイラルを生み、企業経営の秩序ないし企業文化への侵食が進んでいる。それに人件費高騰や米中関係の悪化などのマイナス要素がさらに追い討ちをかけ、業種・業態によって一部の企業は四面楚歌の境地に陥っている。

 もっとも懸念すべきは、長年の経営歴に伴うシステマチックな賃金上昇生産性乖離の問題である。勤続年数の長い従業員が一部マネージャー(中間管理職)となり、そのポストの恒常的属人性が既得利益を意味し、惰性を生み出す母体にもなっている。そこで、パフォーマンスの停滞ないし低下により、実質的に支払われている賃金額(対価)との正比例を失い、反比例(乖離)関係を形成し、いわゆる「オーバーペイ(Over Pay)」状態に陥る。

 さらに、高齢化の進行スキル向上の鈍化により、転職や独立の機会が希薄化する従業員や管理職は、より一層粘着性を増す。日本の終身雇用制度と違って、中国やベトナムでは、この種の均衡調整機能を持ち合わせていない。たとえば、「役職定年」制度は、中国やベトナムで実施することが基本的に不可能といえる(しかし、3階建®人事制度の導入が「役職定年」制度の構築と機能を可能にし、中越両国においてはすでに成功事例が出てきている)。こうしていると、中国やベトナム独自の症状が悪化し、企業財務上のガンとなっていく。

 一方では、社内ポストが一部のオーバーペイ従業員に恒久的に占領されると、若手従業員にとってのキャリアパス(出世道)が狭まる。さらに運が悪く低生産性の上司の部下に配属された場合、有能な従業員ほど不公平感が強まり、心理的な葛藤を抱く。一部の管理現場では若手従業員は上司の小間使いと化し、そのうえ手柄が上司に横取りされたりすると、ストレスや欝憤の蓄積がさらに増大する。最終的に若手従業員・人材の早期離職・流出に伴い、新陳代謝機能障害社内高齢化「逆三角形」現象を招来する。

 これらの構造的問題を、構造レベルから抜本的に解決するには、3階建®人事制度のほかに方法はない。2007年からエリス・コンサルティングが独創した3階建®人事制度はすでに、中国やベトナムにおいて80社以上の日系企業に導入され、成功している。

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