東莞台湾人総経理殺害事件、社員がなぜ老板を殺したのか?

23461殺害された邵さんの遺影で悲しむ妻の江さん(news.maxtv.cn写真)

 広東省東莞大朗鎮・展明五金製品公司従業員・劉漢黄が、労災事故で腕を切断し、会社側と賠償金金額の交渉が折り合わず、裁判で係争中にもかかわらず、台湾人総経理と副総経理を刺し殺した。(情報ソース:「環球時報」2009年6月18日、「法律界」 www.mylegist.com同日報道)

 「助けて!」、6月15日午後、昼休み中の台湾人幹部林駿宏さんは助けを求める声で起される。1階に下りてみると、劉がナイフをもって突進してくるのを目撃。このとき、林さんの兄の林裕騰さん(総経理、33歳)、叔父の邵正吉さん(副総経理、50歳)がすでに殺害されていた。

23461_2殺害された林さんと台湾にいる家族の写真(news.maxtv.cn写真)

 逮捕された劉が取調べに対し、「本来殺そうとしたのは、林駿宏さん、邵正吉さん、労災事故の仲介役である工場長と運転手の4人だった」と答えた。林裕騰さんは、別の会社である世泉五金工場の総経理で、まったく事件に無関係だが、不幸にも巻き込まれ、犠牲者となった。

 犯罪過程が20分ほどに及ぶ。公衆の場で、劉が一人一人刺し殺していくのを見ながら、現場に集まった200人以上の野次馬がただ見物していただけで、誰もが止めようとしなかった。警備にあたる保安の逃げ足がもっとも早かったという。

 林駿宏さんによると、劉は労災で腕を切断し、労働仲裁となったが、仲裁中に劉から労働関係の解除を申し出た。今年1月中旬、仲裁が双方の労働契約の解除を裁決したが、劉は工場から立ち去ろうとせず、屋上に登り、自殺の振りをしたり消火器4つも投下して鬱憤晴らししたりしたという。

23461_3殺人事件のあった東莞展明五金製品公司

 労災事故の被害者である劉は、貴州の田舎からの出稼ぎ者である。工場に入って10日足らずに右腕が機械に切断される事故にあった。「一つの腕ですよ、たったの数万元(賠償金)の価値か、劉は当然怒るだろうし、彼の給料で一家が食いつないでいるのですよ」、劉の同僚の張さんが嘆く。

 薄利を稼ぎ出すために工場主がコスト削減で精一杯。家族を食わせるために労働者も安い賃金を稼ぐことで精一杯。生産現場の安全措置や安全操業教育はちゃんと実施されているのか・・・

 1年半前、私が深圳で労働法の講演会を開催したとき、東莞の某台湾系大手部品会社から、コンサルティングサービスの打診を受け、訪問した。一通り、人事労務制度を紹介しようと話を切り出すと、途中で打ち切られた。

 「あの、われわれは、人事制度などにはとてもコストをかける余裕がありません。1つの部品の利益はたった0.7元か0.8元の世界です。競争がどんどん激しくなるし・・・ですから、人事制度よりも、労働紛争の解決、仲裁や訴訟にどう対応してくれるのか、訴訟10回やったら、1回無料とかこういう料金体系はありませんか」

 あまりにも、単刀直入の質問に私は言葉を失った。人事制度の構築よりも、労働仲裁・訴訟の回数券を買う。これは現状か。

 中国の経済成長の道、少しゆがんでいないか、今一度問いかけたい。

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