法廷で戦う前に、まず法廷と戦う!

 月曜日(12月14日)、労働仲裁開廷の日。早々と仲裁廷に到着し、待つこと1時間半。やっと、指定の時間になったものの、引き続き待機するようにと仲裁廷の担当者に指示された。通常は、指定時間と指定場所で開廷することになっているが、ここは、違うらしい。指定された時間は、あくまでも待機開始の時間であって、順番が来るまでひたすら待たされるのである。

30607_2労働仲裁(本文と関係ありません、百度写真)

 「張〇〇と広州△△公司の仲裁案、×××号法廷へ入ってください」と、まるで、病院での診察待ちのようだ。周りは出廷の当事者、弁護士たちでごった返し。

 さらに待つこと30分、ようやく呼び出される。顧客企業の人事責任者と担当者、私と弁護士の合計4人に、女性の仲裁院担当者が偉そうに指示を下す。

 仲裁 「あのね、法廷に入れるのが、2人だけ、残りの人はホールで待っていなさい」
 立花 「こちらは当事者の会社の人事担当者です。入ってもいいんでしょう」
 仲裁 「あのね、法廷は小さいから、4人じゃ入りきれない。2人だけです。代理人と弁護士だけ!」
 立花 「いや、あの、どこでも、全員入れるはずですが、席がないのなら、立って聞きます・・・」
 仲裁 「私がダメと言ったらダメ、事前に申請したか?」
 立花 「事前に申請必要なのは証人でしょう。発言しない傍聴なら、入れるはずでしょう」
 仲裁 「それでも、ダメです。部屋に入りきれないと言ったでしょう」
 立花 「傍聴で入れないのが、非公開審理なんですか?商業秘密でも国家秘密でも絡んでいるんですか?説明してくださ い。しかも、当事者の会社の担当者なんですよ」
 仲裁 「うるさい!何回言ったら分かるのか?部屋が狭いから、全員がダメだと言っているんでしょう」
 立花 「それは、おかしいです。傍聴は法律に付与される権利ですから、部屋が狭いという理由で、仲裁院法廷が傍聴を拒否するのですか?はっきりしてください」
 仲裁 「あなたね、仲裁院法廷を尊重しなさい」
 立花 「あなたこそ、法律を尊重しなさい。法律を司る人がそういうことを言っていいんですか?あなたは、法律を何だと思っているんですか?」
 仲裁 「あなた、見なさい!ほかの当事者の弁護士も、当事者に(傍聴のないように)説得しているんでしょう」
 立花 「それは、あの弁護士たちが法律を知らないか、あなた達を恐れているか分かりませんが、彼たちの行動は、当事者の権利を損なっているのです。弁護士として失格です!」

30607_3労働仲裁法廷(本文と関係ありません、news.163.com写真)

 現場の雰囲気が険悪になってきた。私は引き下がらない。4人で法廷行きのエレベーターに乗り込もうとすると、顧客企業の方2人が仲裁院の女性担当官に引き止められた。

 仲裁 「ダメです。法廷に入っちゃダメ」
 立花 「分かりました。あなたの氏名と担当官番号を教えてください」
 仲裁 「何するんですか?」
 立花 「傍聴拒否された事実を、審理調書に記載するよう、私は首席仲裁員に求めます。あなたたちの行為に対して、行政訴訟を起こします。場合によって、利害関係の嫌疑もあって、担当仲裁員の忌避も申し立てます」
 仲裁 「分かったよ。あなたに、特別に、1人だけ傍聴を許可します」
 立花 「いまの言葉を撤回してください。傍聴を許可する権利は、あなたにありません。傍聴は法律から付与された権利です。あなたから恩恵を授かるものじゃありません。2人全員傍聴が認められなければ、その事実の審理調書記載を要求します。日本国総領事館にも事実を通報します。外交ルートで中国政府に交渉を申し入れます」
 仲裁 「入れてやれ、全員」

 勝った!法廷に入ってみると、4人全員座れる席はちゃんとあったのだ。なぜ、密室審理にしたがるのだろうか。

 法治社会を目指す中国。法を司る機関でさえ、法を疎かにし、市民の権利を無視する。「我は法なり」の傲慢さ、そして、裁判所や仲裁廷を恐れて堂々と権利を主張できない弁護士たち、保身的よりも、クライアントの権利を抹殺しているというプロフェッショナル失格の醜態には、言葉も出ない。

 中国法曹界の恥で、悲哀である。中国に法治社会がいつ訪れるのか・・・

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