天然ガスをルーブルで売る、ロシアの紳士的対応

 ロシアは天然ガスの支払代金について、契約上のユーロやドルでなく、ロシア・ルーブルで支払うよう欧州等に求めたところ、「契約違反だ」とし欧州が抗議・拒否しているが、まったく違約に当たらない。3点ほど法律面から説明しよう。

 まず、制裁を打ち出し、ロシアをSWIFTから追い出し、ルーブルとユーロ・ドルとの交換をできなくしたのは、当の契約当事者(甲乙)の片方、欧州諸国である。欧州が故意に契約の正常履行を妨害する事由を作り出したのであり、契約違反だけでなく、公平取引倫理にも反する。

 次に、たとえ米国主導の制裁が不可避だとしても、ロシアにとって不可抗力にあたり、契約不履行の免責となるはずだ。

 さらに、不可抗力までいかなくとも、ロシアにとって重大な客観的事情の変更にあたり、「事情変更の原則」が適用される。「事情変更の原則」とは、契約締結当時の基礎となっている事情につき、当初予見し得なかった重大な変化が生じ、もとの契約内容をそのまま履行させることができなくなった場合、契約の改定または解除が認められてしかるべきというものだ。

 故に、ロシアは「もう売らないよ」と契約を解除することができる。ところが、ロシアは「ガスをすぐカットしたら困るだろう」と欧州の事情も考慮し、直ちに契約解除せずに、契約の改定(ルーブル建での支払い)を提案してきたわけだから、契約解除回避における努力義務を最大限に果たし、きわめて適切かつ誠意ある対応と捉えられるべきだ。

 いかに米欧が理不尽であることを、法律面からも説明できる。

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