「Old」と「New」、出張先そして旅先としての北京

 出張は仕事ばっかりしていると、つまらなくなる。私の場合、旅気分の出張が好きで、出張先は旅先でもある。さすが、出張中にまとまった観光の時間を割くわけにはいかないが、食事の時間やつかの間の昼休みなどを、フルに活用しない手はない。

37310_2北京・正陽門をバックにいただくシャンパン

 今回北京出張中に、セミナーが終わって出向いたのは、「Capital M」というレストランだ。おなじみの「M on the bund Shanghai」の北京店で、昨年(2009年)9月オープンしたばかり。天安門広場の南側には正陽門(前門)がある。その正陽門を背景にして食の舞台を作ったのは、「Capital M」。

37310_3「Capital M」

 「M on the Bund Shanghai」が浦東の高層ビル群という「New」を背景にしているのに対し、「Capital M」は「Old」をプレゼンテーションしている。古い物好きの私にとって北京店の方がはるかに大きな魅力をもつ。

 この国に住んでいると、どうも「Old」よりも「New」の優位性を感じる。経済成長は、「Old」の破壊をベースにした「New」の確立である。GDPの右肩上がりとにらめっこしながら、古き良き時代の面影が消え去るのを目の当たりにし、感傷せずにいられない。

37310_4レストランから眺める正陽門の夜景

 「Capital M」の背景となっている正陽門は、北京の中軸線に建てられた北京内城の正門である。「正陽」とは「聖主当陽、日至中天、万国瞻仰」という意味である。紫禁城に入城する皇帝専用の御門で、臣民は通行を許されていなかった。1949年1月に北京が共産党によって解放された時、正陽門で解放軍の入城儀式が行われた。また、日本軍も北京を占領したときは、この門で入城行進を行った。

 時代の変遷を目撃する歴史の証人に一礼して、シャンパンをいただくことにした。