西側時代の終焉。2022年10月28日付け仏ル・ポワン誌のコラム「西側にとって、これから始まる恐ろしい世紀」では、こう述べている――。
「世界は東側にシフトし、明日も明後日も、専制政治のアジアに支配される。欧米はそれに適応していくしかないだろう」
「世界はすでに東側にシフトしており、未来の世界は中国やアジアから支配される。しかし、西側はこれを認めようとせず、長年にわたってずっと自虐的に否定してきたのである。今後の数十年ですべてが東側で決まるということは、何十年も前からわかっていた。米国が中東から撤退し、アジア軸に再展開してきたことそれ自体は何よりもその証左となっている」
「現在の危機は、衰退する西側の主である米国と、モスクワ・北京を軸に代表されるアジアという、拮抗する2極のパワーを生み出している。しかし、我々はあまりにも長い間、明白な事実から逃げてきた。我々の自由・民主主義の価値観は宗教的儀式化し、魅力を失いつつある……」
欧州大国であり、近代民主主義の元祖であるフランスはついに明白な事実を明確な言葉にして認めたのである。米国に悪用されてきた民主主義の変質、腐敗が進み、そのツケがついに回ってきたのだ。私が繰り返してきたように、民主主義それ自体が独裁を始めたからである。
東西逆転の根本的な原因は、米国西側がゲームルールを制定しながらも、自らルールに違反し、都合の良いように解釈、運用してきたところにある。あらゆる違反行為ないし悪事は「我々は民主主義政権だから、何をやっても正しい」という馬鹿げた論理の下で行われた。
もっとも酷いことに、米国は自ら市場メカニズムという資本主義のコアを壊したのである。恣意的にあちこちで経済制裁を行い、自由・民主主義のボスとして他国にも同調を強要してきた。言ってみれば、米国は民主主義を悪用し、資本主義を壊したのである。
最後に補足しておこう。「西側時代の終焉」とは、直ちに西側の消滅を意味しない。東側の支配を受けながらも、棲み分けし、西側陣営内部の分断・分裂が進み、さらに生存競争にさらされた民主主義や資本主義の自己修復力、何よりも既得権益層の出方にかかっている。