ホテル売春、ヒルトンの奇妙な暴走で中国のホテル経営を考える

 今回の北京セミナー出張は、先日購入した北京マリオットカードについてきた無料宿泊券を使って、 JWマリオットホテル北京に泊まって見た。

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39374b_2JWマリオット北京

 最近、中国のホテルの品質は、世界一流に達しているといっても差支えがない。ただし、ハードウェアに限っての話だが。インターナショナル・ホテルチェーンが続々と中国中にホテルを建設し、または運営を請け負うようになった。

 いろいろな問題も生じるようになった。一つ大きな問題は、ホテル内売春だ。

 つい最近の話だが、6月20日、重慶ヒルトンは売春活動を容認することで、営業停止処分になった。中国系メディアの報道によると、同ホテルの株主や経営幹部らが長年黒社会(暴力団)と密接にかかわり、売春を容認し、ホテル内では上から下までバリューチェーンが形成し、一大「裏サービス」に化したという。

 実は、あの国際的にも名高いヒルトンが重慶でホテル売春を主導しているわけではなく、中国系の株主、オーナーの意向で売春活動が行われていたのだった。ヒルトンはオペレーションを請け負っているだけで、強くものを言える立場ではなく、オーナーの言いなりという構図が浮き彫りになった。

39374_3豪快な豪州産!JWマリオット北京の「CRUステーキハウス」

 中国での外資ホテル経営は、私が知る限り、概ね三つのパターンに分けられる。(1)完全自前型。ホテルの建設から経営まで、すべて一つのホテルチェーンが行う。たとえば、香格里拉(シャングリラ)。(2)合弁経営。中国側が一部資本参加する。これは結構多い。(3)オペレーション請負。今回の売春事件の舞台となった重慶ヒルトンもオペレーション請負だ。因みに、上海ヒルトンも中国系オーナーだ。

 このオペレーション請負は、昔、10年や20年の長期請負契約が主流だったが、最近、熾烈な市場競争で短期化の様相を呈している。3年や5年の短期契約も珍しくなくなり、しかも、中国系オーナーがより強くものをいうようになり、外資の運営側の無力感が目立つ。

 今回泊まったJWマリオット北京は、かなり格の高いホテルだ。さすがに「マッサージはいかがですか」という怪しげなコールは一切なかった。ただ、ホテルのバーでは、一杯のドリンクで長時間に座り込み、ちらちらと回りを見回す派手化粧の女性が数人いて、近寄ってくる欧米系の外国人客と耳打ちで会話する光景が散見される。「いやいや、遅くなった。待った?」という待ち合わせのカップルではなさそうだが・・・

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 ホテルでの出会い、自由恋愛、一夜の情事なら売春・買春となるものか。中国の法律は、かなり柔軟に運用されているようだ。性行為に伴う金銭の授受は商取引でなければ、贈与になるのだろうか。売春取引は、無税だろうか。重慶ヒルトンの場合、買春目的でホテルに泊まった客の宿泊代は売春取引額の一部ではないだろうか。ホテルの売春は商取引であれば、その金額はGDPに加算されるのだろうか。加算された場合、GDPを何ポイントか押し上げることになるのだろうか・・・

 質問は次々と出て、答えが見つからない。そして、時には答えてはならない。中国はこのような面白い国なのだ。

 紫煙をくゆらせながら、ホテルのバーで人間模様を眺め、そして思考に耽るのも、中国出張中の一つの楽しみだ。

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