あなたの職業が無くなったら

 私は経営コンサルタントである。

 ただ、近い将来にこの業種が必要とされなくなる、ということもあり得るので、それを想定してサバイバルの道を確保している。日本人なら「あなたの職業が無くなる」と言われると誰もが不快に思う。日本文化における「言霊」とは基本的に現実逃避にほかならない。リスク管理を排除するだけに、自分や家族に対して、経営者なら企業に対して無責任極まりない。

 この時代は、業種も職種も意味がない。生き残るためのサバイバル術のみだ。私とリスク管理を得意とする某弁護士の対話――。

 「弁護士業がなくなったら、先生はどうする?」
 「弁護士業は絶対に無くならない」

 おいおい、リスク管理の前提「もしこうなったら」を抹殺したら、あなたの商売はどう成り立つのか。そういう弁護士自身が最大のリスクだ。

 「この道一筋」。――日本人の職業美学は、この時代に自殺も同然だ。一筋とは、要はそれ以外に何もできないということの自己美化に過ぎない。二筋、三筋が必要だ。

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