チャンスかハンディか?名門ブランドののれん

 久しぶりに、「Whenever上海」を手にしてめくってみた。

 まず、こんなに分厚い一冊になったことでびっくり。次に、内容がこれだけ豊富になったことでまたびっくり。

 上海はこれだけ選択肢が増えたのだなと思った。1994年上海赴任で来たとき、日本料理店だって上海市内に10軒あるかないかの情況だった。今夜はあの店の鍋を食べに行こうと、同じマンションの日本人同士が誘い合っての一大イベントだった。いまは、上海の日本料理店といったら、500店はゆうに超えているだろう。

46174_2<懐かしアルバム>寒中梅(2003年2月和歌山県南部(みなべ)にて撮影

 先日、某有名な天ぷら専門店が上海に出店したと聞いた。さっそく行って見ようと思って、インターネットで口コミを調べてみたら(私の一貫したやり方だ)、出るわ出るわ、悪評――。落としたエビをそのまま揚げたとか、べちゃべちゃな天ぷらが出てきたとか、客の気持ちを無視する接客態度とか、実体を伴わない高級な値段だけ輸入したとか・・・

 あくまでも匿名評論で、その事実を知る術はないが、ただ経営側が悪戦苦闘していることは手に取るように分かる。上記はいずれも、客としてビジュアル的に確認できる事象だが、客に見えないところでもっともっと多くの問題を抱えているに違いない。

 いまの上海はあたかも世界中のチャンスを束ねているかのように見えるが、実体はどうだろう。いまこそ上海、中国に打って出なければ、将来がないという認識は必ずしも100%正解とはいえない。業種やブランド、商品、市場や消費者の成熟度などなど多元に吟味しなければならない。

 ある意味では、名門ブランドののれんが中国で重荷ないしハンディになることが多い。下手にすると、本店まで巻き込まれてしまう。その分、中小企業や無名ブランドにとって、中国はチャンスを意味するかもしれない。もちろん、資金力という次元ではハンディを負っていることはいうまでもない。しかし、勇気、知恵と真摯さが有力な武器である。