患者さんの代わりに医者にかかる?銀行の代理コンサル問題

 先日、某日系企業から就業規則の審査を依頼されて、ざっとその就業規則に目を通すと、中国法に違反する規定がいくつも記載されているほか、明らかにすでに法の改定があった部分のアップデートができていない内容もあった。

 「どこの弁護士さんが作ってくれたものですか」と聞くと、実は、メインバンクの某大手邦銀がくれた雛形だと教えてくれた。

 メインバンクであるこの銀行が取引先に好意でこのようなことをしていると思うが、果たしてその好意が良い結果になるか。

 日本のメインバンク制度は、世界を見ても非常に特異な存在である。それはそれで日本のビジネス風土に合っていれば良いものだと考える。取引先の経営について国内から海外まで、幅広く世話する姿も温かみを感じさせてくれる。ただし、銀行は銀行であって、すべての分野においてスペシャリストには到底なりえない。その辺責任ある対応の範疇を明確にする必要があるだろう。

 以前、邦銀の数行から、人事労務関係の質問が寄せられたことがある。どう見ても、銀行自身の問題ではなく、その取引先の問題であることが明白だ。その回答をすべて断った。

 患者さんの代理で医者にかかるようなものだ。取引先のためになるかどうか、しっかり判断して、責任ある対応をしてほしいと、日本の銀行に切に願いたい。