マラッカ海峡の夕陽、ポートディクソンで過ごす平日

 「マラッカ海峡に沈む夕陽はとてつもなく大きく赤い、と聞いたことがあった」(沢木耕太郎 『深夜特急2―マレー半島・シンガポール―』)。本当にその通りだ。ホテルの窓から望む海峡。地平線に向かって刻々と近づく太陽は、大きく赤い。

 マラッカ海峡の夕陽を拝むには、何もマラッカまで行くことはない。スレンバンの自宅から30kmちょっと離れたマラッカ海峡の海辺に、ポートディクソンという小さな街がある。首都圏の人混みを避けて平日に行けば、静かに夕陽と対話することができる。

 9月13日(水)。今回投宿するのは、「Corus Paradise resort」という古い4つ星リゾートホテル。古いが、清潔で安い。1泊170リンギット(約5300円)。週末になると、宿泊料は倍近く跳ね上がる。クアラルンプールから客が殺到し、ホテルは満室で道路も渋滞する。だから、ポートディクソンなら、平日がいい。

 夕食は、「Hao Kee Seafood Restaurant(豪記海鮮餐館)」で食べる。マレーシアはどんな辺鄙な地方へ行っても、必ず華人が経営する美味しい中華料理店がある。インテリアも何もない。レストランは食べ物だけの世界だから、余計なコストはかけない。

 自然がいっぱい、カンポン(田舎)の中の食堂。夕陽を浴びての食事と酒、これ以上の幸せはあるまい。お酒は例によって持込自由なので事前に準備しておいた。海鮮なら、やや強めの中国白酒が合う。お酒の香りが素材のキャラクターを引き立ててくれる。

 海鮮料理はどこのレストランも似たり寄ったりの出来栄え。ただこのレストランの清蒸蝦(蒸しエビ)はなかなかユニーク。単なる蒸したエビではなく、卵白とじで仕上げる。せっかくの蝦の出汁を逃さずに、卵白で吸収する。

 ご馳走様でした。

<次回>