誕生日の続編。
夕食の後、新聞を読んで寛いでいると、「誕生日ケーキの時間です」と妻がケーキを運んできた。「ケーキは買わなくていいと言ったじゃないか」というと、「買ってません、作ったんです」。
一瞬、私は声を詰まらせた。
私の法律の仕事をいつも見ている妻が見事に言葉使いの技を覚えたのだろうか、いや、そういう問題ではない。
美しく整った市販のケーキよりも、形がやや崩れている。「Happy Birthday」の文字もゆがんでいる・・・。でも、このゆがみを見つめていると、私の胸がぎゅっとなって、涙をこらえるのに必死だった。家族の絆を深く、深く、感じた一瞬だった。感謝と幸せで胸がいっぱい・・・
この手作りケーキの価値は、市販物の百倍も千倍も一万倍も、いや、金銭では計れないものだ。計ってはならないものだ。ならば、ケーキは買うよりも作るものだ、このような究極のロジックになる。
なんだか、このゆがんだケーキが私の心をまっすぐにしてくれた。人間はまっすぐに生き、まっすぐにものを言い、そしてまっすぐに愛し合う。いつまでも、いつまでも・・・。
そして、ロジックや哲学、論理的で唯物の世界は、どこかで、非論理的で唯心の世界と通じ合う秘密の扉がちゃんと存在するものだ。私はその扉を見つけたような気がする。