喧嘩は怖くないが・・・、ユニクロの貼紙で考える対中リスク管理

 日中関係の話で持ちきりの日々が続いている。

 関係者は、日中の喧嘩が早く収まってほしい、仲直りしてほしいと口をそろえる。私に言わせてもらえば、喧嘩は怖くない。怖いのは、ルールなき喧嘩だ。

 夫婦がいくら仲が良くても、一回や二回くらいは喧嘩するものだ。喧嘩しなくなったら、それはもう冷戦が続いて離婚直前だ。ただちゃんと喧嘩のルールを決めてほしいものだ。戦争だってルールがいるのだから、喧嘩ももちろんルールが必要だ。

 あまり心配は要らないと思う。2~3か月経つと収まるし、半年も経過すれば何事もなかったかのように元通りに戻る。もっとも怖いのは、元通りに直ったら、それで忘れてしまうことだ。リスク管理はちゃんとしておくべきだ、企業は。

 ユニクロのように、いざというとき、警察に強要されたとかで、店頭に「尖閣は中国領」という張り紙をするのがちょっといただけない。それは、企業内の緊急時対応マニュアルができていない証拠だ。

89033_2(写真:weibo.com)

 「日経ビジネス」では、柳井社長が、「1店舗だけ、たったの40分間だけ張り紙を掲示した・・・」と子供のような弁解をしているところは、見苦しい。世界の有名な経営者として大きな失点だ。

 1店舗と10店舗はどう違うのか?40分間と4時間はどう違うのか?1店舗でたとえ4秒でも掲示したら、結果は同じだ。私が指摘しているのは、ユニクロの売国とかではない。「政治的立場を表明しない」という経営上の原理原則(柳井社長が自ら語っている)を曲げたことだ。

 デモ隊がそこまで来ているのだから、危険から身を守るために、やむを得ず張り紙を張ったと柳井社長が弁解しているようだが、一つ単純な質問をすると、次に反日デモ隊がやってきたら、また張り紙をするか、多分、もうしないと社長は言うだろう。ちゃんと予防策を打つだろう。だったら、なぜ、早く対策を打っておかなかったのか。それは、予想外とか未曾有とか、最近様々な用語が流行っているから、そこのへん拾って使えばいいのかもしれないが・・・。

 「予想外」とは何か、予想すればいいじゃないか。予想しなかったのはリスク管理の不備だろう。「未曾有」のことがどんどん発生する世の中だから、企業の経営者は子供のように逃げ道を作ってはならないのだ。

 個人経営の日本料理店なら、家財を守るために張り紙だろうと旗だろうと何でも貼り付けて掲げるのは理解できるが、ユニクロは一応、まあ日本を代表する大きな企業なのだから、もう少ししっかりしてほしいなあ。

 未曾有のことを予想するのが、経営者の責務だ。

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