水野氏との議論その五~入口よりも出口、進出と撤退の考え方

 「入口よりも、まず出口の確保」。これは、リスク管理の基本中の基本であって、私の持論でもある。中国の問題は入口よりも、出口の問題がはるかに大きい。中国では、外資企業への「歓迎会」が行われていても、「送別会」が見ない。「葬式」にならず、「生きて帰る」ためにも、しっかりした「出口」確保が欠かせない。

 最近、多くのメディアでは、「中国撤退は大変だ。難しい」と言っている。論調によってはややトーンの高いものもあるのだが、概ね実情によって裏付けられているものではないだろうか。逆に批判するなら、企業リスク管理の観点から、進出ブームのとき、過熱気味のメディアがもっと批判されるべきではないだろうか。

 中国ビジネスにかかわるコンサルタントとして、自身の商売を考える上で、もちろん大勢企業が進出してくれたほうが商売になる。だが、企業利益の最大化にお手伝いする専門家として、むしろ、その企業にとって進出が正解なのか、撤退が正解なのか、それを論理的に検証するのが仕事だと思う。

 たとえ、いまこのような厳しい時期だから、みんな撤退したほうがいいかというと、そうではない。少数でも中国市場に食い込める企業は必ず存在する。ただ、市場全体としてのリスクが増大し、光よりも影が大きいことは紛れもない事実であろう。

 「中国進出は難しい、中国での成功はもっと難しい、中国撤退はさらに難しい」と、私は常に言っている。日中関係が少し落ち着いたら、もうそろそろ出てもいいじゃないかというような論調もあったりするが、違うだろう――。

 進出とは、天気予報を見て判断するのではなく、どんな悪天候でも耐えうる、自身のリスク耐性を評価したうえで決めるものである。

 撤退とは、病に侵され、死に瀕した時にするものではなく、元気なうちに、体力があるうちに、現実のリスクが自身のリスク耐性を超えたと判断した時点で行うものである。

<とりあえず、終わり>

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