「天要下雨、娘要嫁人」、アジア投銀参加に見られる人間ならぬ国家模様

 「天要下雨、娘要嫁人」という中国語のことわざがある。林彪が毛沢東の暗殺計画に失敗して飛行機で国外へ逃亡する。その一報を受けた毛沢東がつぶやいたのは、この言葉。――「雨は降るものだし、母ちゃんは嫁(再婚)に行くものだ。好きにさせればよい」。最終的に林はモンゴルの砂漠で墜落死を果たした。

 なんとなく、これを思い出す今日この頃。

 3月末の「参加申込締切」を目前に、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加表明をめぐる戦いが熾烈さを増している。世間はどうしても、日米陣営だとか欧州勢の裏切りだとかと見てしまうが、そこまで政治的に考える必要はないのではないか。

 アジア開銀との競合を嫌うのなら、アジア開銀の競争力を向上させればいいだけの話だ。そもそもアジア開銀にとっても自省するいいチャンスではないか。途上国を果たして「お客様」として丁寧に扱ってきたか。襟を正して改善して、きちんとやればアジア投銀に負けることはなかろう。

 肝心な問題は、貸出に関わる不正や汚職、中国によるアジア投銀の独裁や悪用ということだが、それもさほど心配はいらない。たまには失敗の教訓が必要だ。もし予想通りに問題が起きれば投銀参加各国は気付かないはずがないだろうし、文句をいうだろうし、損害を受けるかもしれないだろうし、教訓にしていいのではないか。

 イギリスなどの欧州勢の投銀参加表明は、米陣営への裏切りだ。そのとおりかもしれない。米国よりも中国からより多くの利益が得られれば、転向するのも不自然な意思決定ではない。アメリカはもっと盟友を引き付ける魅力を身につけなければならない。それも反省ものだ。

 アジア投銀、史上もっとも壮大な中外合弁企業プロジェクトは果たしてその行方はどうなるか、今結論付けるには時期尚早だろう。ただこれまでの経緯を見る限り、個人的には楽観視していない。といっても、参加各国は政府であって、個別企業よりも十分な情報収集とリスク評価、損得勘定の力を持っているだろう。これを契機に本当の中国を学習するということになれば、決して悪いことではない。

 女を寝とられた気分は決してよくない。ただ相手の男と付き合って、元亭主の良さが分かればそのうち戻ってくることもあろう。静観しようではないか。日本が静観グループに留まるのも悪くない選択だ。

 「天要下雨、娘要嫁人」