ジョホールバルは深圳ではない、JBブームも潮時か?

 いよいよ、ジョホールバル・イスカンダル地区の不動産投資は、「?」が鮮明になってきたようだ。5月13日付のマレーシア中文経済紙「南洋商報」では、「マレーシア不動産購入、シンガポール人さらに慎重姿勢に」と題した記事を報じた。

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 数字があまり良いとは言えない。イスカンダル地区の新築住宅戸数は33万6000戸になり、これはすでにシンガポールの個人住宅の総戸数を上回っている。そして、販売戸数の不振。シンガポール人がイスカンダル地区での住宅購入戸数は一昨年の2609戸から、昨年の838戸へと68%も急落している。

 現地の方からも聞いたが、一部かなりゴーストタウン化が進んでいるようだ。マレーシア人に聞いたところ、「なんで日本人がイスカンダルばっかり追っかけるの」と不思議がられることもしばしば。私の友人でジョホールバル出身のマレーシア華人だが、彼は数か所不動産を所有しているが、いずれもクアラルンプール都心や近郊。故郷の不動産にまったく興味がないと言っている。

 ジョホールバル、イスカンダルに関して、不動産の供給過剰はどうやら間違いないようだ。買うなというのではなく、シンガポール人に見習って、慎重にと。

 ジョホールバルと中国の深圳とよく並べて比べられるが、私から見れば本質的に違うように思える。

 深圳には製造業を中心とした産業集結があって、地方からの出稼ぎ者(ブルーもホワイトも)を大量に吸収する仕組みになっていた(いまは一部凋落し始めたのだが)。だから、街として総量を膨らませ、都市の大規模化につながった。

 さらにいうと、深圳は開発当初、社会主義貧国である中国大陸と資本主義の先進国香港との接点という位置付けが非常に明確になっていて、むしろそのコントラストがフォーカスされ、国家総動員的な資源や政策投入がなされたわけで、当然それなりの結果がついてくる(副作用もたくさんついてきたが)。
 
 その辺、シンガポールを背後に抱えているだけで、ジョホールバルの中長期的ポジショニングがあまり見えないまま、ただただ地政学的優位性が強調され、独走し出したのだった。

 シンガポールの裏庭だと、シンガポール人の年金生活の楽園だと、それも一つ明確な位置付けである。だったら、「シルバー・シンガポーリアン・パラダイス」として、それなりの戦略が付随しないといけない。これも、うーん、現状はちょっと違うんじゃないか。

 地政学的な優位性は確かにある、ジョホールバル。ただそれが生かされていないまま、いろんな利害関係者のいろんな短期利益に囚われ、知らないうちに乱開発が進み、奇妙な街になってしまったというのは、私自身の感覚だ。