ペナン食い倒れ日記(7)~大東酒楼の朝、懐かしきワゴン式飲茶

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 8月14日(火)、ペナン食い倒れツアー3日目。第5ラウンドは、飲茶(ヤムチャ)。早朝からホテルの朝食はフルーツだけにして早々と切り上げてジョージタウンに繰り出す。

 エディソン・ホテルから徒歩10分弱、あの有名なナムケン・ホテル (Nam Keng Hotel)を通り過ぎ、交差点を渡った所に「大東酒楼」(Tai Tong Restaurant)があった。朝8時半、すでに満席。

 昔時の懐かしきワゴン式飲茶、ここには健在。おばさんたちが押すワゴンが次から次へとやってくる。そこから好きな品を取って伝票に記入してもらう。待ち切れない人は目当てのワゴンを目指し、伝票をもって点心を取りに行っても良し。

 飲茶というと、最近少々の高級店になると、大抵メニューからオーダーする形が取られている。このメニュー・オーダー式が「文字選択」というならば、ワゴン式はまさに「現物選択」になる。

 「文字選択」は客の商品知識や想像力に依存する。これによって当たり外れが出てくるわけだ。いや、たとえ一定の経験があっても必ずしもそれが当てになるとは限らない。「焼売」(シューマイ)といっても、店によっては微妙に違うものが出てきたりする。

 やはり、「現物選択」が一番。国籍や人種、言語、文化に関係なく、どの客にも平等に商品がリアルに展示されるのだ。分かりやすくて文字が読めない子供でも好きなものには手を出せる。もちろんデメリットもある。予定外や想定外の品だが、美味しそうだったのでついつい手を出してしまったりする。

 海外ではあまり見ないが、日本国内では普及している食品サンプルを想起せずにいられない。飲食店の店頭に陳列される料理の模型は、商品の細部を視覚的に表現し、準リアル化によって消費者の理解と消費意欲を促すものだ。であれば、ワゴン式飲茶は完全リアル化した「現物選択」になる。

 

 ただ品目毎の課金制という意味では、ブッフェと一線を画している。ならば、客がいざ伝票を紛失したとき、店はどう処理するかが気になる。

 職業病的にいろいろ考えてしまうのが私の悪い癖だ。消化に悪い。食べることに専念しようと、はい次は何を食べようかな。というのもワゴン式飲茶ならではの楽しみだ。

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