イポー食い倒れ日記(4)~鶏の街イポー、鶏戦争の俯瞰マップ

<前回>

 イポーといえば、美食の街で有名だが、そのなかでも「鶏」がもっとも有名だろう。さらに様々な鶏料理があるなか、代表格は何といっても、「モヤシ鶏」「塩鶏」である。

 まず、「モヤシ鶏」は中国語(広東語)で「芽菜鶏」(ガーチョイケイ)という。イポーは、モヤシがとにかく美味しい街である。石灰岩の山々に囲まれるイポーのきれいな水で育ったモヤシが太っている。日本語の「モヤシっ子」とは、ひょろひょろ伸びて色白で痩せている人を表現するものだが、イポーのモヤシはお腹がふっくらとしていて、常識を覆し、見事な「デブモヤシ」になっている。

 そのモヤシ鶏料理の専門店はイポーには何軒もある。元祖と言われている「老黄芽菜鶏」以外には、「老梁芽菜鶏」や「安記芽菜鶏」、「高温街芽菜鶏」といった競合店が善戦しているだけに、モヤシ鶏の激戦区といっても過言ではない。さて、どこで食べるかが問題だ。

 数店舗の中でも一番気になっているのは、中心街の外れにある小型店の「高温街芽菜鶏」。しかし残念ながら私の滞在中にはこの店は臨時休業だった。時間の制限もあって、最終的に「老黄芽菜鶏」と「安記芽菜鶏」の2店での食べ比べに絞らざるを得なかった。

 次は、「塩鶏」。中国語(広東語)では、「塩焗鶏」(イェンゴッケイ)という。客家料理の丸鶏の塩蒸し。これもイポーの名物だが、ただレストランよりもお土産として売られることがほとんど。塩鶏専門店の店頭には通常レストランが併設されていない。そこで買った鶏は家に持ち帰って簡単な過熱加工を施して食べるか、あるいは近隣のレストランに持ち込んで食べても問題ない。

 もっとも有名な塩鶏専門店「宴瓊林塩焗鶏」や「万里香」を筆頭に、これも多くの競合店が街の中心街に集中している。十人十色ならぬ十店十味、それぞれの店の味を楽しみに何回かイポーに通うのも悪くない話だ。

 こうしてみると、鶏の街イポーには鶏を看板とするレストランや店舗が実に多彩であり、かつ熾烈な競争を繰り広げている状況がわかる。この街を訪ねてくるグルメ客には、まずこういったバックグラウンドと激戦区の配置マップをざっくりと俯瞰的に把握しておく必要があるだろう。

 では、いよいよ本番だ。

<次回>