音楽の裏側(1)~刹那的に消える瞬間、誰一人いない客席を眺めて

 マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団(MPO=Malaysian Philharmonic Orchestra)の常任指揮者、友人でもある古澤直久氏の招きで、週末コンサートの前に特別に舞台や楽屋の見学をさせてもらった。

指揮者・古澤直久氏と舞台に立つ

 クラシック音楽の愛好者として、めったにないチャンスでわくわくしていた。演奏はどのように行われているのか、その裏のメカニズムには好奇心を抱かずにいられないからだ。いうと、2つの「裏」がある――。曲の裏と演奏の裏。今回は後者の裏を見る機会に恵まれたのだった。

 目線の持ち方が全然違う。客席から舞台を見る目線と、舞台から客席を見る目線。同じ空間と思えないほどの異質感だ。特に誰もいない客席。開演前のひと時、客席を眺めている指揮者や演奏家たちはどう感じているのか、それが気になって仕方がない。どのような観客がどのような期待をもってこの空間にやってくるのか。そして舞台上下の空気がどのように一体化していくのか・・・。

 瞑想したくなるような空間だ。それ自体も一種の芸術、あるいは哲学の世界である。音楽を聴くだけなら、CDでもネットでも簡単にできる時代だ。わざわざコンサートホールへ出向く理由は何か。私の場合はやはり、刹那的に消えていく瞬間を求めて、そこに無尽の価値を見出しているのである。

 「同じ川には二度と入れない」。古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスがいう。コンサートも然り。生の演奏の迫力や臨場感もそうだが、何よりもその瞬間その瞬間の不確定性、哲理に満ちた示唆が最大の魅力である。

<注>写真は特別許可を得て撮影したものです。

<次回>

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