サパの旅(7)~豚も犬も水牛も取引される、縁日気分満喫

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 カンカウの土曜市。

 子豚も生きたまま売買されている。取引が成立した子豚はギャーギャー鳴き声を上げながら、袋に詰められて持ち去られる。見ていると、昨日食べた焼き豚のことを思い出して、可哀想になった。

 隣のコーナーでは子犬も取引されている。これも食用かとガイドに聞いたら、違うようだ。基本的に番犬になるという。良かった。愛犬家の自分は犬食に対する憎悪は凄まじい。犬食の友人とも絶交してしまうほどだった。

 もっとも大きな取引は水牛だ。1頭2000ドルを超えたりする。水牛の寿命は約25年。丈夫な水牛なら、20年ほど働いてくれる。農家にとって欠かせないパートナーだ。ベトナム人はこんなことを言う。「人生に3大イベントがある。それは、水牛を買うこと、結婚すること、そして家を建てること」

 土曜市や日曜市のような週1回しか開かれない市場へやってくる人たちは、1週間の食料品や日用品をまとめ買いして持ち帰る。これを逃したら1週間は大変なことになる。裏返せば、この周一の買い出しはある意味で縁日気分を満喫する行事であって、そして華やかな社交活動でもあるのだ。

 先進国や都市部ではもはや市場という概念がすでに消滅されたのである。無味乾燥なスーパーで、整然と陳列された商品を無表情にカートに放り込み、そしてバーコードのピーピー音とともにまたこれも無表情な取引が成立していくのである。

 きっと都会人はこの土曜市を懐かしく思い出すことだろう。

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