イポーの道草、絶品ダックを食べて帰ろう

<前回>

 ペナンという街は住む街ではない。長く住んでいたら、痛風やら何やら美食病たる疾患を患うのは目に見えているからだ。グルメ友人のK氏はマレーシア駐在中の体験をこう語る――。

「ペナンの屋台村は、オモチャ売り場を前にした幼児と化してました。もうコントロールが効きませんでした。胃がもたれるほど食べまくり、初めて我に返った時は既に後の祭り。ペナン出張はこれの繰り返しでした」

 3泊は限界だ。逃げるようにペナンの街を脱出する。とはいっても車を飛ばして目指すのはイポーだった。

 昨年9月のイポー旅行に、一つの心残りがあった――。満腹と時間切れのため、美味しそうなダック専門店「新揚威」を断念したこと(参照:イポー食い倒れ日記(7)~ワンタン麺と豆腐花、そしてダック下見)。

 リベンジを果たすべく、今回のペナン帰りはイポーへ立ち寄ることにした。駐車スペースの確保もあって、3月14日(木)は朝早く8時半過ぎにペナンを出発する。渋滞もなく、10時40分にイポー「新揚威焼鴨専門店」前に到着。計算通り、開店前の早い時間帯で、店のまん前に駐車スペースがまだ残っていた。

 11時の開店まで待つと言ったら、店の人はどうぞどうぞと親切に店内に案内してくれた。「新揚威」の焼鴨(ダック)は3種類ある――普通焼き、当帰焼きとスモーク(燻製)焼き。一番の人気メニューである当帰焼きを注文してみた。むしろ、私は北京ダックよりもこちらのほうが好き。パリパリの皮とジューシーな肉がいっぺんに食べられるのが幸せ。そしてほどよい当帰の香りがまたよろしいこと。帰りには3種類のダックを半羽ずつお土産に包んでもらった。

 これだけでは済まない。車で「宴瓊林(Aun Kheng Lim)塩焗鶏専門店」に立ち寄り、これもお土産で名物のイポー塩鶏を7羽購入(参照:イポー食い倒れ日記(番外編)~イポー塩鶏に魅了される日々)。常連客となった以上、老板(店主)が親切にクーラーボックス詰め作業まで手伝ってくれた。

 ペナン出張は飛行機を使わずに車を使う理由は、帰りのイポー立ち寄りや食べ物の大量購入が自由にできるからだ。イポーの道草タイムは2時間。ちょうどいい休憩になって都合がよい。イポー経由のペナン・クアラルンプール間は360km、6時間をかけてゆっくり走破する。まさに「グルメ・ルート」である。

 午後15時、自宅帰着。

<終わり>