「制度づくり」よりもまず「ムードづくり」、中国人事労務の鉄則

 先日、来社された顧客A社のLさんからこのような話を聞かされた――。

 「先週、人事コンサルのM社の責任者が、営業で来ました。雑談で、いまM社の競合社はどこになるかと聞くと、先方は、うちはエリスの立花さんを除いて、競合がいませんと豪語されたのですよ」

 いやいや、光栄至極というよりも、私はいままで一度もM社を競合社として考えたことがないのだ。コンサル分野が重なっていないように思えたからだ。

 少し前、人事コンサルP社のQ先生のセミナーに出席すると(同業者の入場を許してくれたP社に感謝する)、Q先生が参加者全員にこう言った。「本日は、業界のトップであるエリスの立花さんも来られています。人事労務といえば、立花さんがダントツですが、われわれP社は、業界二番です」

 私は、一番も二番も相対的だと思う。エリスを選んだお客さんにとってエリスが一番だろうが、P社を選んだお客さんから見ればP社が一番になるわけだ。

 人事コンサルといえば、人事制度づくりが一般的だが、どちらかというと、私は、「制度づくり」よりも「ムードづくり」の方にはるかに力を入れている。いくら良い制度があっても、良いムードをなくして制度が到底浸透できないし、満足な効果を出せないからだ。

 中国の問題はどこにあるのか。法律がないわけではない。問題は法律がまともに守られていないところにある。企業の問題はどこにあるのか。制度がないわけではない。制度がまともに実施できていないところにある。

 「法制」があっても、「法治」に至っていない。「制度」そのものよりも、制度を実施するための風土が健全ではないからだ。ルールを守る「善」が、ルールを破る「悪」よりも損しているようだったら、いくら良いルールがあっても、世の中は良くならない。ムードが悪すぎるからだ。

 だから、中国の人事は、「制度」よりも、まず「ムード」。と、私は思う。

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