散髪したい。2か月も経てば、ついにもたなくなる。しかし、ロックダウン緩和があっても、理髪店はまだ営業できない。仕方なく、ネット通販にバリカンと散髪ハサミ、ヘアカットのセットを発注した。同時に、妻がYouTubeで散髪の特訓を受講中、という我が家の新常態。
コロナがわれわれの暮しをだいぶ変えた。「不要不急」という名のついた用事やイベントが省かれた。しかし、散髪はどうだろう。「不要不急」だった散髪は、時間が経つにつれて「必要緊急」になってくるものだ。にもかかわらず、理髪店が閉まっている。残される道は「自給自足」にほかならない。
家庭内でいざ散髪が可能になれば、今後理髪店や美容院にいくのだろうか。私の場合、おそらく行かなくなる。あるいはたまにしか行かなくなる。時間の節約になるし、お金の節約にもなる。世の中、私のような人がどのくらいいるか分からないが、全体的に考えると、美容業にとって決して「グッドニュース」ではないはずだ。
ポストコロナは、「非接触型経済」「遠隔型経済」が台頭する。散髪という消費行為を取ってみても、「対人対面サービス」という形態が「非接触型」に移行する選択肢が明らかにされ、なお「体験型学習」によってその実行可能性が実証されれば、あとは消費者の価値判断に委ねられるだけ。したがって、在宅散髪が少なくとも一部の人にとって「新常態」になっていくだろう。
さらに面白い展開も考えられる。コロナ期間で散髪の技術を身につけた人は、個人事業主として近所へ「出張散髪サービス」を提供することも可能になろう。グラブタクシーのようなアプリができてもいい。
その個人対個人の散髪サービスが普及すると、一部の美容院が潰れる。店舗を構えて賃貸料を払い、スタッフを雇用して給料を払っていれば、固定費に圧迫され当然競争力が低下する。こうして、散髪という「一極集中型」の業態から「分散型」が派生する可能性が生まれるわけだ。
コロナは都市という「一極集中型経済」を狙い撃ちしている。ロックダウンも集中や集結を強制的に遮断し、棲み分けさせる手段である。こうして見ていると、ポストコロナ時代のあるべき姿やなり得る姿もある程度示唆されたようにも思える。