Singapore is a FINE country

 シンガポール空港のラウンジで書いている。

 「Singapore is a FINE country」という言葉が有名である。

 「FINE」という英語は、通常「素晴らしい」、「良い」という意味だが、同時に、「罰金」という意味もある。シンガポールは非常に罰金の多い国である。ガム持込禁止、喫煙禁止、トイレの水の流し忘れ禁止、など、あらゆる社会的利益を損なう行為を罰金で規制している。だから、「FINE Country」というのは、「素晴らしい国」と「罰金王国」の二重の意味を有している。あるいは、「罰金があっての素晴らしい国」とでもいうべきだろうか。

 まず、「罰則」の有無が重要だ。たとえば、中国で大変問題になっている役人の汚職問題を考えてみよう。単純な質問だが、A役人が腐敗汚職の悪人で、そいつを役職から追い出し、クリーンなBをそのポストに当てる。クリーンなBはいつまでもクリーンのまま汚れない保証はあるのか?答えは明白だ―NO!AもBも、生身の人間であり、経済学の法則が働く。人間は、常に遵法コストと違法コストを天秤にかけて判断をする動物である。性善説でいくと、人間は生まれつき善良だが、社会の「悪」に染まるかどうかで、性悪説たるものが語られるわけだ。

 次に、考えなければならないのが、「罰則」の軽重、さじ加減問題。完全遵法すればコストが1万元、違法した場合のコストが5000元、しかも違法行為が摘発される確率は1%、さてどうするか?違法行為に走る人がたくさん出てくる。では、厳罰にしようと。盗みをしただけでも、死刑にする。すると、Aが盗みをして、Bに見つけられた場合、BはAに殺される危険が百倍も増大する。Aにとってみれば、盗みも殺人も同じ死刑なら、Bを殺してしまおうと。しかも、Bを殺せば、Aの犯行の目撃者が消えるわけだから、逆にAの法に裁かれるリスクが大幅に低減する・・・

 最後に、「罰則」の実施問題と監督体制問題。中国は、日本の六法全書並みの法律が整備されている。しかし、浸透できない、実施できない、乱れに運用される・・・これは、監督体制の不在に起因している。政治問題にも絡んでくるので、当分解決が大変難しいと思われる。

 大きな中国と小さなシンガポール、同じチャイニーズの国、けれど、これだけ違う国になっているとは誠に不思議である。私は、個人的に、「中国の変化」よりも「シンガポールの不変」が好きである。

 そろそろ、飛行機の搭乗になるので、この辺で切り上げる。