副業を禁止できるのか?中国労務管理の注意点

 中国では、副業を禁止できるのか?これは難問だ。

 まず、法律をみてみよう。労働契約法39条(4)項では、「労働者が同時に他の雇用単位と労働関係を確立し、当該単位の業務任務の遂行完了に重大な影響をもたらし、または雇用単位の指摘を受けたにもかかわらず是正を拒否した場合」は、解雇(雇用単位による労働契約の一方的解除)できるとしているが、不明点があり、解雇要件も設けられている。

 1つ目、「労働関係」とは何か?中国法の下では、一般に「労働関係の締結」とは、正式に労働契約を結んだうえで生じる法律関係(労使の関係)を指している。では、労働契約を結ばずに仕事だけを請負ったり、他社の株主や役員になったりする場合は、副業の範疇に入るのか。つまり、会社は法の趣旨に則って、「副業」の射程を適切に定めることが必要になる。

 2つ目、「同時に他の雇用単位と労働関係を確立する」こと、つまり、二重三重、複数の労働関係の確立は可能であるか?労働契約法69条では、「非全日制労働者使用に従事する労働者は、1つまたは1つ以上の雇用単位と労働契約を締結することができる」と、複数労働関係の確立があり得ること、そしてその適法性を認めているのである。

 上記から分かったことは、複数の労働関係の確立が可能であり、それ自体が違法ではないが、ただ「副業」の射程を明確にする必要があり、さらに労働者の副業の不当な運用によって雇用単位の権利を侵害する恐れがあり、そうなった場合、雇用単位が当該労働者を解雇することもできるということである。

 3つ目、副業の不当運用による解雇要件になるが、「当該単位の業務任務の遂行完了に重大な影響をもたらす」ことをめぐる具体的規定(定量化・定性化)と評価基準が必要になってくるし、「雇用単位の指摘を受けたにもかかわらず是正を拒否する」ことの立証問題も注視されなければならなくなる。

 それでは、実務のポイントを挙げよう。

 (1) 会社は、従業員の副業を禁止するかどうかについて、明確な方針を決定する。禁止する場合の法的根拠は?承認する場合のリスク管理は?といった問題にも答えを出さなければならない。たとえば、「原則禁止・条件付きの特例許可」というのも1つの選択肢といえよう。

 (2) 副業の射程はどこまで網羅するかについて、明確化する。たとえば、非全日制労働(アルバイト・パート)や人的資源のシェアリング、他社登録による派遣・受注(中国語:挂靠)、業務請負などといった直接・間接の形態を包括的に網羅し、副業の定義や範囲を明らかにしよう。

 (3) 「原則禁止・条件付きの特例許可」という形を取る場合は、「実体」「手続」の両面から規程を定めなければならない。「実体」は、各社各様であり、個別ベースでの助言になるが、とりわけ「手続」について、標準化されたモデルの一部抜粋を紹介しよう。

 ① 副業希望者による副業申請書の提出。副業に従事する背景や原因の説明、副業先企業の名称・住所・連絡方式、担当予定の副業の詳細(職位、業務内容、期間、勤務時間、待遇など)および会社が求める他の情報、こういった内容の記載を求めよう。

 ② 会社は上記申請を審査し、許可した場合、書面による許可書を発行したところで、当該従業員がはじめて副業を開始することができる。

 ③ 副業期間中に、会社は定期・不定期的に副業報告の提出を従業員に求めることができる。①の情報に変更が生じた場合、従業員は、変更する内容を記載した副業変更申請書を提出しなければならない。会社の書面による許可をもって副業を継続することができる。

 ④ いったん許可された副業であっても、無条件にいつまでも継続可能であることを意味しない。会社は都合と判断により、副業制度全体または特定の個別従業員に対して、副業の許可条件および関連する規定をいつでも、変更したり、副業の一時中止や終了を命じたりすることができる。従業員は拒否権を有せず、会社の指示命令に従わなければならない。

 ⑤ 従業員が副業規定に違反して副業に従事した場合は、会社はその情況により、関連する懲戒処罰を行うことができる。最悪の場合は、労働契約法39条(4)項および46条等の法令に基づき、経済補償金を支払うことなく、労働契約を解除することもできる。

 ……などである。

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