なぜマレーシア移住政策が消滅したのか?6大原因徹底分析

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 マレーシア定住・長期滞在ビザ、マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)の事実上の終了は、ほぼ確定だ。政府が再検討の結果、基本的に条件厳格化された改正案をそのまま維持との結論に至った。もはや、再々検討はないだろう。民間当事者側は軒並み、落胆する結果になった。6つの原因(敗因)を分析してみよう。

 原因その1.MM2H利害関係者の不作為(ロビー活動の不在)。昨年2020年8月にMM2Hは、新規申請案件の一時中止、既存申請案件の大量却下という状況になった。政府はコロナ下において条件の見直しを行うと発表した。それ以来まるまる1年間、MM2H利害関係者(MM2H業者団体、経済産業界、政治家など)からはほぼ実質的なロビー活動がなかった。受身的に待った。今年21年8月に政府が突然、MM2H条件改定を発表した。それに、関係者全員が一斉に口を大きく開いて、青天の霹靂に吃驚仰天の状況だった。何ら心の準備も実務の準備もなく、1年という時間を無駄にしてしまったのだった。

 原因その2.MM2H利害関係者の脇の甘さ。マレーシア政府を甘く見ていた。そこまでの条件改悪を想定すらしなかった。まあ、そこそこ条件を厳格化するかもしれないが、まさか資産や収入条件を数倍引き上げ、さらに既存資格保有者にも適用が及ぶとは、夢にも思っていなかった。さらに、現実に即していない政策をいずれ修正したり、Uターンしたり、撤回したりするのは日常茶飯事であろうから、さほどの心配は要らぬと徹底的に楽観していた。しかし、今回は違った方向に展開したのである。私は常に最悪を想定すると主張していたが、マレーシアだから大丈夫だろうという希望的観測に基づく楽観論がほとんどだった。

 原因その3.MM2H利害関係者の政府との対立姿勢。今年8月の条件改正発表があった、その直後に抗議の嵐が巻き起こった。こんなにハードルを高くしたら、みんなが逃げ出して資産フライングが起こり、コロナでただでさえ疲弊化しているマレーシアの経済がさらなる大打撃を受けると、いささか政府を小馬鹿にした。つまり政府に対立する敵対姿勢を見せてしまったのだ。それは大きな間違いだった。日本人会を含めて様々な形式の嘆願書や要求書を提出したのも、賢明とはいえるのだろうか。9割以上のMM2H参加者を失うという軒並みの数字を挙げ、政府の愚を批判するばかりだった。ロビー活動を怠り、抗議活動に走った。

 原因その4.「なぜ」を問わない、問えない愚。いまだに、抗議を続けている関係者たちには、ある疑問が消えていない――。それは、なぜ政府がそんな愚策を打ち出したのかだ。それはロビー活動をしていなかったから、答えられないわけだ。政府はそんなに馬鹿なのか?金をドブに捨てるような馬鹿な真似をなぜしたのか、必ずそれなりの理由があったはずだ。その理由や背景を突き止めない限り、問題解決ができるはずもない。単に経済への打撃を主張し続けても、何ら役にも立たない。

 原因その5.戦術的な小手先への固執。マレーシア本土のMM2Hと異なり、サラワク州独自のS-MM2Hを申請すればいい。それを入手すれば、マレーシア本土にも住めるし、そうした逃げ道があるのだから、心配は要らぬと、この期に及んでもなお、戦術的な小手先に拘っていた。一方、連邦政府はすでにサラワク州やサバ州への裏工作に手が回っていた。合意にこぎつけるには、連邦側は何らかの取引条件を現地に提供するだろう。最終的に、東マレーシアのS-MM2Hを本土と統合して単一基準に持ち込み、逃げ道を塞ぐだろう。

 原因その6.市場メカニズムの無視・軽視。そもそも、今回のMM2H条件改定に、なぜこれだけ強烈な反発が出たのだろうか。それは、元々のMM2H条件が甘すぎて、そしてマレーシアに人気がありすぎたからだ。つまり、需要と供給の関係では、需要が非常にあるのに、供給の価格が低い相場に設定されていたことだ。すると、本来ならば、マレーシアに来るべきではない外国人も現に便乗して来てしまったと。二八法則※があって、8割が去って、2割が残ってその分を貢献すればいいと、マレーシア政府が腹をくくったのだろう。

 マレーシア政府は、「高品質のMM2H参加者を求める」と明言した。つまり、これまでの参加者に、低品質者が多すぎるということだ。これは、善悪の問題ではない。価値観の問題である。マレーシアには、選択する権利がある。国家主権の一部でもあるからだ。われわれ外国人には、高品質を目指すか、立ち去るかの選択を行う、これも権利である。淡々と受け入れるべきであろう。

※ <注>二八法則の運用

 MM2H新規定では、平均して資産収入条件が5倍ほど引き上げられた。そこで、二八法則を適用してみよう――。

 単位資産収入が1である100人中の80人が流出し、残りの20人は5の資産収入をもっていれば、総量が100に戻るわけだ。つまり、「100×1=100」と「20×5=100」、マレーシアは後者を選択したのである。これは量よりも、質の変換がはるかに重要で、セグメンテーションを富裕層にシフトしたわけだ。

 80人の一般人よりも、20人の富裕層の伸び代がはるかに大きい。世界情勢をみると、特に先進国では中流階級の溶解が進んでいるため、企業レベルも国家レベルも戦略変更を余儀なくされている。つまり、中間を切り捨て、上層のほうにセグメンテーションをシフトするということだ。

 そうした意味で、マレーシアの国家戦略は正しいといえる。

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