汚染水問題(15)~アジアのボイコット、日本食品全般に広がる様相

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● アジアのボイコット

 日本の核汚染水の海洋放出は、中国や韓国だけでなく、東南アジア諸国の人々からも強い反発を招いている。

 「セーブ・マレーシア委員会」などマレーシアの複数の非政府組織(NGO)は9月19日、在マレーシア日本大使館に抗議文を提出し、汚染水の海洋放出は生態環境と人命を危険にさらしていると厳しく批判し、全国規模の日本製品不買運動(ボイコット)を動員する姿勢をも見せた(2023年9月20日付星島網)。

 マレーシアでは、8月下旬の「国民全員が声を上げ、海を守ろう」署名運動をはじめとする多くのデモを展開し、1万人以上が参加している。また外食業界も自主的に日本産水産物の輸入を止め、他国産品に切り替えるなどで対応している。私の周りにも、「日本の海鮮は、No Thank you」というマレーシア人が多い。

 マレーシアだけではない。韓国の日本水産物の輸入は、8月分で34.8%減。汚染水放出開始は8月24日だから、この数字は驚くべきだ。韓国政府は日本の放出に反対していない。規制もなされていない。市場は正直だ。

 日本のメディアは、これらの出来事をほとんど報じておらず、あたかも中国だけが日本に意地悪しているかのようにプロパガンダを広げ、日本国民を煽っている。しかし、実態はひどい。中国の日本産水産物の輸入は8月分で7割減、9月は10割減(輸入ゼロ)になるだろう。さらに第2陣以降の汚染水放出には、香港禁輸も予想される。

 最終的に日本水産物輸出の半分は消える計算だ。国内消費がいくら拡大しても追いつかない。もう1つの不思議がある。日本国内の水産物消費拡大は、たとえある程度盛り上がったとしても、その分他の食料品消費の減少につながらないか。消費者の胃袋のサイズも財布のサイズ(厚み)も、総量は一定しているからだ。

● 水産物だけではない

 水産物だけではない。都内のスーパーを調査してみると、例年、1房1500円から2000円ほどで売られているシャインマスカットが980円や780円と、多くのスーパーで半額近い値段で売られています(2023年9月15日付テレ朝ニュース)。中国や香港向けの高級ぶどうの大幅輸出減が、日本国内価格下落の主因だ。

 汚染水とは関係がない。なぜ日本の農産物も影響を受け始めたのか。中国やアジアの一般消費者の目線や論理からすれば、日本は汚染水を海に流しておきながらも、科学的に安全性が証明されているから、みんな黙ってろと、さらに逆切れして中国の反発を批判する姿勢はいかに傲慢かというふうに受け止めている。

 その反発は理性を超えて、水産物にとどまらず、いずれ農産物ないし日本酒にも及び、日本食品全般に対するボイコットに発展しかねない。振り返ってみると、日本はこれまで産官一体で日本産の農水産物・食品を世界に向けて一生懸命PRしてきた。その努力と投資は汚染水の一件ですべて水泡に帰す。いかにもったいないか。

 そしてもっとも憂慮すべきは、日本の産業。どこまでダメージに耐えられるか、その耐性が問われようとしている。汚染水の海洋放出は、30年どころか、3年も続かないだろう。いや、もしや3か月も難しいかもしれない。放出撤回で岸田政権が崩壊するか、岸田政権が崩壊して放出撤回かは分からないが、日本の自国いじめはもう、いい加減にやめたらどうだろう。

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