マクドナルド殺人事件、殺人よりさらに怖いこと

 「あの~、お客様、お店で寝ないでください・・・」

 上海市徐匯区天鑰橋路1号のマクドナルドで3月19日未明、店内で仮眠していた若い男性客が起こしに来た店員を刃物で3刀を浴びせ、その場で死亡させる事件が発生した。犯人は直後、流しのタクシーに乗って逃走中。

34903_2無残な現場(百度写真)

 死んだ店員は上海市金山区出身の李鋒さん(23歳)。父親らの話では、彼は首を切りつけられ、腹を刺されたりした。致命傷はけい動脈を切断されたことによる失血死とみられる。

 李さんはいわゆる上海の近郊農家の生まれ。市内の大学を卒業後、外灘(バンド)地区の貿易会社に職を得たが、家計を助けるため、市区内に部屋を借りて夜マクドナルドでアルバイトしていた。この日は前夜の午後8時から午前6時までの勤務に就いていた。(中国各メディア報道)

 殺人事件は怖いが、殺人事件よりさらに怖いことがある。ネット掲示板への書き込み集(2010年3月22日現在アクセス)を見てみよう(一部抄訳)。

 2010-03-20 11:45:51 新浪ネット北京ユーザーdfcf139: 無残な事件だが、上海人には教訓になるだろう。これからは、外地人を見下すな!いじめるな!さもなければ、刺されるのは、この一人ではないはずだ。

 2010-03-20 11:44:52 新浪ネット北京ユーザー: 外地人を差別することには、コストが必要だ!この事件は上海人に教えた。

 2010-03-20 12:47:20 新浪ネット山東移動ユーザー: 未明4時に仮眠しているからといって、お宅の商売を邪魔しているわけじゃないだろう。余計なことをやって殺されて当然だ!

 2010-03-20 12:47:15 新浪ネット移動ユーザー: 私は犯罪人を応援する!

 2010-03-20 10:56:10 新浪ネット移動ユーザー: 上海人は金持ちを気取っているじゃないか?もともと(深夜アルバイトをしていることで)貧しかったのか?

 2010-03-20 08:39:10 搜狐移動ユーザー: 上海人は貧乏人を見下している。店員まで外地人をいじめ、上海語で人を貶す。この客も多分店員から侮辱の言葉を受けて、行動に出たのだろう。それなりの理由がある。

 2010-03-20 10:23:04 搜狐社区ユーザー: 殺されて死んで良かった。ホームレスの出稼ぎ者を見下して、侮辱の発言をしたから殺されたのだろう。上海人は、外地人のことを「瘪三(ピェサン=浮浪者チンピラ」と呼んでいるだろう。

 2010-03-20 11:58:19 搜狐移動ユーザー: 上海人は一人でも多く死ねば、この世の中に、けちん坊や女々しいやつが一人減る。

 2010-03-20 11:24:10 騰訊長春ユーザー: 上海人は、TM(お母さんを罵る放送禁止用語の頭文字)全員死んでしまえば、中国は救われる。

=======以上抄訳=======

 店員と客の間で何があったのか、誰もが目撃しているわけではない。仮に、店員が本当にその客に差別の態度を取ったとしよう。むかついた客が店員を刺した。このような事件は、最近日本でも少なからず発生している。これは、まさに現代社会の病であろう。怖いとは思うが、それよりも、ネットの書き込みを見て、もっと恐怖を感じ、ぞっとして鳥肌が立つ。

 私が、ずっと、ブログで書いているが、中国社会の問題は、「法治」の欠落である。「法治」の欠落といえば、司法や役人の歪みに起因しているかのように見えるが、もっともっと深層な根源を抱えている。それは、国民平均法治意識の薄さである。その具体的な表れは、「法律」と「道徳」の混同であり、そして、論理的な思考回路の不在である。

 「他人を差別したから、殺されても当然だ」

 典型的な症状である。「差別行為」は道徳上のものであり、「殺人行為」は法律上(刑法)上の問題である。根本的に次元が異なるし、同位置にして因果関係を付けることは到底できないはずだ。国民の平均法治意識の向上をなくして、真の法治が育つことはあるまい。

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