万博雑談(1)~上海万博と大阪万博の同一性誤認

 世の中は万博一色。けれど、上海在住の私は、無関心のようでブログに書くのもこれが初めて。そして、いまだに万博会場へ足を運んでいないし、またこれからも足を運ぶ予定が立っていない。理由はいろいろある。

 「消費を底上げするうえで上海万博の意義は大きい。それは日本の経験を見ても明らかだ。日本は1970年の大阪万博直前の68年にドイツを抜いて西側2位の経済大国になった。1人当たりのGDPも70年ごろの日本は3000ドル程度で今の中国の約3500ドルと重なる。40年前の大阪万博には6400万人以上の来場者が集まり、成長を実感した。『食の欧風化、カジュアル衣料の普及――。日本の消費生活は大阪万博を経て変わった。中国でも同様の変化が必ず起きる』。大阪万博にかかわり、上海万博でも日本産業館の総合プロデューサーを務める作家の堺屋太一氏は断言する。上海万博は消費喚起への『内国博覧会』でもある。1人当たりGDPが3000ドル台の庶民がすでに1万ドルを超えた上海にでかけ、豊かな生活を体験することで消費に火がつく可能性は高い」

 以上は、メディア報道(日経ビジネス)の一節である。堺屋氏の論点は、多くの日本人の論点を代弁しているものと言っても過言ではない。GDPの類似性から、上海万博と大阪万博の同一性を語っている。

 40年前と40年後、時代が大きく変わった。経済成長はGDPという指標を援用してきたが、経済成長その中身には大きな変化があった。国民生活のスタイルも本質的に変わった。豊かさの実感や幸福感も、価値観も変わった。同じ3000ドルのGDPでも、40年間の為替変動や物価変動を加味すると、そもそも購買力を単純な同一レベルで評価していいのか。

 政治・経済体制、社会保険・福利制度、雇用制度、貧富の格差なども、日中間の差異が大きい。中国は完全市場経済ではない。国家による資源の独占、社会保険制度の立ち遅れ、国民・消費者の将来に対するコンフィデンス(信用・信頼)、消費者行為、中国を取り巻く外部環境・・・

 言ったらきりがない。それだけ、変動要素が絡んでいる。

 だから、上海万博を大阪万博に重ね合わせ、戦後の復興に成功し、経済成長の軌道を快走しはじめた日本といまの中国の経済状況が酷似していることから、上海万博の意義を評するには、短絡的過ぎるのではないかと思う。

<次回>

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