「島流し料理」って食べたことは?

<三亜滞在中に食した海南料理の紹介> 第1回第3回

 島流し。

 流罪(るざい)とは刑罰の一つで、罪人を辺地や離島に送る追放刑である。流刑(りゅうけい)、配流(はいる)ともいう。流刑地が離島の場合には島流しとも呼ばれる。

37420_2「島流し料理」をいただきます

 日本国内なら、八丈島や佐渡など有名な流刑地があるが、中国古代の流刑地の代表格といえば、海南島だった。海南島は古来中国人にとって世界の南の果てだった。 東坡居士蘇軾も一時ここに流されて4年暮らした。島流しの刑に処せられた政治家や官吏たちがこの地に辿り着き、故郷への岐路を断念した思いからこの地を「天と海の果て」と呼んだ。

37420_3亜龍湾・五号別荘・蘭庭軒

 島流しに処された官吏たちは、流刑地に付き人たちを連れて行き、身辺の世話をさせていた。その付き人の中でも、特に料理人が重要な存在になっていた。料理人はご主人の日常の食事を調理するだけでなく、同じ流刑に処され、海南の地にやってきた官吏たちの「島流しパーティー」を盛り上げる大役も引き受けていたのだった。同じ立場の官吏たちがよくこのようなパーティーを催し、互いに心の傷を慰め合ったり、励まし合ったりしていた。そこで、異なる地方の料理人がそれぞれ腕を振るって、まさに流刑地ならではの「食の万博」を上演していた。そのようなこともあって、しばらくすると、各地の料理が海南地方の食文化に溶け込み、独自の「島流し料理」文化として開花したのだった。

37420b_3五指山猪炒め

 それは「海南官府菜」と名付けられても、「宮廷料理」ではなく、失脚した官吏たちの「島流し料理」だった。

 本日足を運んだのは、亜龍湾・五号別荘・蘭庭軒の「海南官府菜」。湖に面したレストランで、「島流し料理」専門店として有名だ。

37420_4五指山黄牛のピリピリ炒め

 東山羊、五指山猪炒め、五指山黄牛のピリピリ炒め、山菜炒め、海南アサリの冬瓜スープ、海南黎家スペシャル焼き飯と一通り代表的な料理をいただいた。

37420b_4海南黎家特製焼き飯

 「島流し料理」とあって、あまり華やかさがないものの、どれも素朴で美味しい料理だった。流刑中でも料理人がしっかりついて、これだけ美味しいものを食べられるとは、不謹慎かもしれないが、「島流し」も悪くないなあとさえ思えてしまう。

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