9月16日(金)、水上コテージLato Lato Resortを離れ、本土側のセンポルナに戻る。午前10時発のボートに乗れと言われたので、余裕をもって9時半からリゾートの船着き場で待機する。しかし、いくら待っても、10時過ぎてもボートが一向に現れない。
スタッフに何回聞いても10時発と言い張る。「でも今はもう10時過ぎてるでしょう」「10時出発です」「だから、今はすでに10時20分じゃないですか」「10時出発です」。いくら問い詰めても、スタッフは誰もが英語ができないので、それ以上会話が進まない。大丈夫か。置き去りにされていないか。少し心細くなってきた。
10時30分、ようやく少し英語のできるおばさんが出てきた。何と今日は突然の予定変更でボートは団体客ツアーの送迎に使われたらしい。大丈夫、大丈夫、そのうち来るから、もうちょっと待ってくれと。マレー系らしい対応で、彼・彼女たちには悪気がない。もちろん、私は怒らない。
そういえば、不思議なことにこのリゾートは、スタッフも客もみんなマレー系。中華系の人は1人もいない。なぜだろうか。この謎が解けたのは、陸側に戻った後だった。
ボートでセンポルナの街に戻り、港のカフェでお茶を飲みながら休んでいると、経営者らしい華人系デブおじさんが大声で電話口でしゃべっている。「おいおい、お前は本気でそこに泊まるのか。あっち系のコテージだぞ。エアコンないし、飯まずいし、海にし尿を垂れ流してるし。お前はまさかその海に入る気か…」
私の事を言っているのか、思わず反応してしまう私。デブおじさんと目が合ってしまった。電話を切ったおじさんがニコッと笑って話をかけてくる。
「何かあったの?」
「いや、あの、その、おそらくそのあっち系のコテージに私が泊ってしまったの。垂れ流しの。」
「あー、そういうことか。何で、もうちょっと良いとこ泊まらないの」
「良いとこは全部満室だったから」
「オンラインで見たんだな。空いてるよ。いっぱい空いてる。華人系の旅行業者が全部抑えていて、華人客に売ってるよ。早く言ってくれればいくらでも取ってあげたのに」
デブおじさんはカフェと旅行会社のオーナーだった。謎が完全に解けた。「あっち系」と「こっち系」。善も悪もない。単なる健全かつ平和な棲み分けである。