ハワイ(3)~廃棄食用油を食す国とそれを燃料とする国

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 燃費ほぼゼロ。使用済みの廃棄食用油で走るクルマ。聞いたことはあるか?

72589_1山崎美弥子さんが乗っている80年代型のベンツディーゼル車

 そんな車がモロカイ島を走っている。案内役の山崎美弥子さんが乗っている80年代型のメルセデスベンツのディーゼル車は、ガソリンスタンドで給油しない。代わりに、燃料は自家製のリサイクル・オイルを使っている。

72589_2モロカイ島Halawa Valley Beach
72589b_2海辺でのピクニック

 島のレストランから廃棄サラダ油をもらい、自家開発の濾過設備でリサイクル・オイルを再生する。アメリカではレストランなどが使用済みの油を高額な処理費を払って廃棄しなければならない。回収してくれる者がいれば、喜んで差し上げるわけだ。

 排ガスの軽減、環境にやさしい。しかも、経済性抜群。まさに、エコそのものだ。

2009年の「サスティナブル(持続可能な)モロカイ~ハワイ未来会議」で上映された、モロカイ島出身のフィルムメーカー、マット・ヤマシタ製作のドキュメンタリーフィルムでは サスティナブルな(持続可能な)モロカイ島の人々の暮らしが紹介され、その中で、美弥子さんのエコ車物語が取り上げられている。

72589_372589b_3モロカイ島Papohaku Beach

 「地溝油」。

 モロカイに負けず、中国にもリサイクル食用油がある。レストランだけでなく、工場などの排水溝や下水溝に溜まったクリーム状の油を濾過し、精製した安物の食用油脂のことだ。ただ、中国では、このリサイクル油は、車の燃料としてではなく、人間食用に使われているのである。エコどころか、中国人なら誰でも知っている深刻な社会問題になっている。

 中国全国食糧・食用油標準化委員会油料油脂チーム長を務める、武漢工業大学の何東平教授は、年間200万から300万トンの地溝油が現在中国国内のレストラン等で利用されていると推算する。中国全国(大陸)の動物油と植物油の年間使用量が2250万トンであるが、食用植物油の生産量は2000万トンに過ぎない。この差が、地溝油であると推測する。使用量全体の1割以上の規模であり、10回外食をすると、確率的にそのうち1回は地溝油を食している計算になる。「誰もが口にしているはず」と何教授は懸念を示す。

72589_472589b_4モロカイ島の花々

 経済発展を満喫している中国、そして、経済発展のツケを払っているアメリカ。「正義」に対する捉え方はいささか違うように思えてならない。

 「君子愛財、取之有道」。君子は財を愛す。されど之を取るに道有り。「論語」が出典とされている。「富と貴きとは、是れ人の欲する所なり。其の道を以てこれを得ざれば、処(お)らざるなり(富と貴い身分とはこれはだれでもほしがるものだ。しかしそれ相当の方法(正しい勤勉や高潔な人格)で得たのでなければ、そこに安住しない)」(金谷治「論語」岩波文庫・P.53)。

 「恭喜発財」(財を成すことを祈る)――。ちょうど今、中国は旧正月。旧暦新年の挨拶として誰もが口にするこの「恭喜発財」だが、「財を成す」その道を再考する必要があるのかもしれない。

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