ハワイ(4)~グローバル化逆行!貨幣不要とチョイスなき幸せで鎖国妄想膨らむ

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 現代社会には、チョイスが多すぎる。チョイスが多すぎるから、人間は迷う。時に苦痛さえ感じる。そして、経済社会である以上、マクロ環境に左右され、人間の弱小化・無力化が進む。この世界規模の連帯感をあえて断ち切って、地域コミュニティーで暮らしの営みが完結できないものか。

72662_1モロカイの夕日

 「経済のこと、世のこと、まったく関係なくなる」

 エコビレッジを目指す山崎美弥子さん自身が、良き実践者である。モロカイという島で、水道以外のエネルギーとほとんどの食料品(もちろん有機栽培)は準自給自足状態で暮らしている。

72662_2モロカイの古いベーカリーで買った、昔懐かしい菓子パン

 自宅の一部をペンションとして現在機能させているが、無料で宿を提供することもあるという。たとえば若い学生の場合、無料宿泊の代わりに家事の手伝いをする、美弥子さんの言葉では、「ワーク・トレード」という。

 私はとても興味を持ったのが、この「ワーク・トレード」。「物々交換」に近い、「物・役務交換」とでもいうべき取引の様式である。

72662_3誰もいないモロカイのビーチ

 最大な特徴は、貨幣が介在しないことだ。貨幣不在の商取引に対して政府は課税できなくなる。あるいは、「物々交換取引課税法」を立法するか。それでも、物々交換による取引では貨幣が介在しないため、貨幣による納税ができない。あるいは、政府に対しても役務提供で納税義務を果たすべきなのだろうか。そもそも、これが「小さな政府」の実現につながるのではないか。

 自給自足の生活では、「食の安全」の問題がほぼ解消できるし、金融危機などにも無縁となるだろう。経済や政治の不公平を抗議する「ウォール街を占拠せよ」運動よりも、ウォール街と対抗しうる無数個のエコビレッジを作ればことが済む。むしろ、これらの「村」が勢力を強めていけば、ウォール街の弱体化につながる。

72662_4モロカイの猫たち、今日も元気かな・・・

 リーマンショック以降、貨幣不信が強まり、金本位制の復活が盛んに議論され始めている。世界貨幣史から見れば、一般に紙幣から、金銀本位制、鋳造貨幣へと遡っていく。もしや、今後の世界は何らかの変質が起こるかもしれない・・・。

 クローズド環境であって閉鎖された「村」という選択肢もありえるのだ。ふと思いついたことだが、グローバル化の荒波に飲み込まれる日本は、もしや、再鎖国で救われるのかもしれない。閉鎖された「日本村」に、日本人が古き良き幸福を取り戻せるのかもしれない。モロカイ島で私は、妄想に耽っていく。

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