私は比類なきB級グルメで出張などの旅中も基本的にB級を選ぶようにしている。ただし市場調査目的でA級へ行くこともある。上海出張中にも5つ星高級ホテルの中華料理店で一度だけ食べてみた。高いだけに味が洗練されているのは当たり前だが、サービスには問題あり。
40代後半のおばさんウェイトレスは笑顔を絶やさないものの、何を聞かれても「私は入りたての新人でわかりません、マネージャーを呼んできます」と。食材の産地や調理法など少々込み入った話ならわかるが、水に氷を入れてくれと頼まれても戸惑ってしまうのはちょっといただけない。
研修を受けたのだろうか。聞いたら、「わからないことは適当に誤魔化さないで、『わからない』と素直に言え」と教育されたそうだ。しかし、いつまでも、何もかもわからないままでいいだろうか。さすがに聞けなかったが、いつまで働くかもわからないスタッフなら、研修コストをかけないのも合理的といえるかもしれない。
一方、客にとってみれば、A級レストランで食べる合理性が薄れてしまうのではないか。これは何も中国だけの話ではない。どこも社会が豊かになるにつれて飲食業で働きたい人が激減し、その分穴埋めに外国人が働いたりしてサービスレベルが低下する。だが、B級はもともとサービスも何もないから、影響をあまり受けないし、料金が安い分、客も文句を言わない
「お金を出せば美味しいものを食べられるの(A級)が当たり前だが、お金を出さずに美味しいものにありつけるのはB級の醍醐味」という。
ところが、今の時代は、お金を出したからと言って必ずしも期待通りのものが手に入るとは限らない。つまり、期待外れのリスクがある。一方、B級の場合は、もともと期待しない分リスクが少ないだけでなく、期待以上の収穫があればまさに望外の喜びにもなり得る。
私がB級を好む理由の1つは、ここにある。