マレーシア不動産視察(1)~情報の正しい捉え方と価値判断

 週末を利用して移住先のマレーシアの居住環境を視察するために、上海からマレーシア航空で現地へ飛んだ。今回は首都クアラルンプール(以下、「KL」と略称する)の視察に絞り込む。

 マレーシアはこれまで、ティオマン島、ペナン島、ランカウイ島、パンコール島、ジョホールバル、そしてKLと、島のビーチリゾートを中心に5~6回訪れたことがあるが、いざ住むとなると、まったく異なる目線が必要になる。

80014_280014b_2KL郊外の庭付き一戸建住宅、相場は日本の約半分以下

 視察とは、情報収集のことである。情報は、無色無臭のものでなければならない。だが、現に情報の発信源の目線、観点、価値観ないし利害関係から、多少の色付きは避けられない。すると、このような色や匂いを取り除いて、純粋な事実に還元する必要がある。このへんは、僭越ながら私の得意分野でもある。

 そのコツを教えよう。まずは情報の内容を、「客観的事実」と情報提供者の「主観的意見」という2つのまったく異質なものに仕分けする。

 「都心からかなり離れていて、生活は不便ですよ」

 このようなコメントを受けたとき、私の脳には瞬時に、「これは、ほぼ100%主観的意見」と表示され、客観的事実を求める質問が一気に浮上する。

 「遠隔地とは、都心から何キロを目安としているか?」
 「車だとどのくらいの時間がかかるか?渋滞状況は?渋滞時の迂回道路は?」
 「生活の不便とは何か?」
 「買い物なら最寄のスーパーまでの往復時間は?スーパーの品揃えは?配達業者は存在するか?」
 「救急病院までの距離と救急車搬送の所要時間は?」(これは一番重要なことだ)・・・

80014_380014b_3住宅はリゾートホテル並みのプールやジム付きが当たり前

 このような事実関係を突き止めた時点で、自分の今後のライフスタイル(ニーズ)に照らして、総合判断をする。「客観的事実」と「主観的意見」の主な仕分け指標は、形容詞である。「近い」「遠い」「早い」「遅い」「混雑」「閑散」「便利」「不便」「高い」「安い」「良い」「悪い」・・・などなど、これらは主観的な表現として捉えたい。

 不動産仲介業者だと、当然仲介料という利益が絡んでいる。単純に経済的観点からすれば、より高額な仲介料を得るために、当然取り扱っている高額物件がベストだ。すると、業者は都心に近いという利便性を強調する。これは詐欺でも何でもない。当たり前のことだ。都心の利便性を重視する顧客が喜んで買ったり、借りたりするわけだ。顧客への価値の提供となる。利便性の追求は、自分の価値に合致するかどうか、これをしっかり判断するのが顧客側のイシューとなる。

80014_4KL市内の立派な病院、日本や欧米の大学を出た医師が常駐

 利便性は、価値があるものである。その利便性を手に入れるために、ほかの価値要素を放棄しなければならない――。もっと広々とした空間、もっと大きなグリーンの芝生、もっと広く見える青空、もっと清々しい空気・・・。

 各価値要素のウェイトと均衡関係を考慮し、すべての最大化を図るのが、不動産を買い求める、あるいは借りる側の経済学である。だから、情報の仕入れにあたって形容詞などの主観的陳述や固定概念に囚われずに、情報に内包される事実の判明と、その事実に対する着目点と価値判断が大切である。

<次回>