1月7日(火)、マレーシアの大学生(MJIIT校)向けに1回目の授業を行う。実務研修の冒頭では、学生と社会人の違いについて語る。学生から社会人になると、何が変わるのか、と問われたとき、私は答えた。
「嘘をつかなければならなくなる」
その言葉を口にした瞬間、胸の奥に鈍い痛みが走った。学生たちは驚いた表情を浮かべたが、その中には戸惑いとともに真剣に耳を傾ける目もあった。「大人は嘘をつく」。それは避けられない現実であり、私自身も長い歳月の中で痛感してきたことだ。社会では真実だけでは動かないことがある。他人や自分を守るため、関係を壊さないため、嘘が必要になる瞬間がある。
「でも、これだけは嘘をつかない」と私は心の中で誓う。嘘をつかねばならない現実を語ること、その真実を学生たちに伝えることが、私にできる最小限の務めなのだ。
だが、語り終えた後、ふと視線を落とすと、心が砕けそうな悲しさが押し寄せてきた。彼らはまだ純粋な瞳を持ち、希望を胸に社会へと踏み出そうとしている。そんな彼らに、大人の現実を伝えなければならない自分自身を責める気持ちが湧いてきた。「嘘をつかねばならない」という真実を告げることで、彼らの純粋さを奪ってしまうのではないか。そう思うと、言葉の重みが一層心を締めつける。
それでも、いつか彼らが社会に出たとき、今日の私の言葉が何かの支えになればと願わずにはいられない。どんなに悲しくても、真実を語ることが私の役目だから。