ある顧客から、「ERISのコンサルティングフィーは、マッキンゼーと変わらないのではないか」と問われた。
たしかに、提示している金額の水準だけを見れば、我々のフィーはグローバル大手と同等か、場合によってはそれを上回ることすらある。だが、我々はマッキンゼーではない。
ずいぶん昔の話になるが、若きコンサルタント時代、私はEMBAや法学修士、博士号の取得を目指し、仕事と大学院という二本立ての生活を続けていた。そのころ、ある顧客企業の幹部から、皮肉を込めた調子でこう言われたことがある――「立花さんは、マッキンゼーのような会社を目指しているのですか?」
私はこう答えた。
「いいえ。マッキンゼーは、100のうち98を網羅し、見事に遂行する偉大なコンサルティング・ファームです。ですが、当社は零細であり、逆立ちしても彼らに勝てるはずがありません。我々は、マッキンゼーがやらない、あるいはできない「2」にフォーカスしているのです」と。
そして、それは現実になった。
我々が扱う「2」とは、制度や組織の骨格を設計することにとどまらず、血流にあたる意志の伝達、神経に相当する感情や信頼の接続、さらには中医学でいうところの「気脈」にまで踏み込む領域である。すなわち、言語化されず、文書にもマニュアルにも現れない、人と組織の「気の流れ」そのものに手を入れる仕事である。
我々の関与は、単なる制度設計ではない。それは、帝王学が語る「統治の原理」に基づいた“仕組みづくり”であり、この種の深層的課題には、マッキンゼーのような体系化された知的インフラでは対応しきれない。
ゆえに、我々のフィーが高いのは、規模によるものではなく、踏み込む領域の深さによって決まる。量ではなく密度、網羅ではなく貫通――それこそが、ERISの価格の根拠であり、われわれ自身の仕事の価値である。