水野氏との議論その四~撤退時の税務調査とリストラ

 中国撤退時の税務調査について、ルールに則った事前試算可能なものを除いて、追徴や罰則適用を水野氏は今回の議論から除外しているのだが、その辺はもっとも厄介で、言及されたいところだ。特に疑義をもつもので、氏が指摘している「日常的に遭遇しており、腹立たしく思う」事例である。これは、理屈上復議や行政訴訟の道もあるのだろうが、ただ実務上では現実的とはいえないであろう。さらに度重なる「嫌がらせ」的な調査によって、まさに「取引費用」の増加で、「泣き面に蜂」状態であろう。

 撤退時のリストラ。経済補償金算定はそう難しい話ではない。ただ、この計算された法定の補償金通りに、実務上の補償が円滑にいくかというと、状況がかなり違うだろう。水野氏も指摘されているような、経営者や管理職の「監禁事件」は決して珍しい話ではない。法外な補償金を要求してきたり、従業員による脅迫、経営妨害、タレコミ、破壊行為、言ったらキリがない。

 こういう場面には、本社からの追加資金援助で対応したら、企業にとっての被害がますます拡大する一方である。金の取れるところから金を取るというのは、この国の常である。

 法の支配のもとで、法治社会における企業運営、ないし撤退の発想や思考回路をそのまま愚直に中国に持ち込むと、ある意味で自傷行為、自殺行為も同然。体力の少ない中小企業なら簡単に取引コストで潰され、襟を正して首を吊る羽目になる。

 繰り返しいうようだが、水野氏が提唱される企業倫理の姿勢に異論はなく、それは正論であろう。ただ、順法コストをはじめとする取引コストに着目してほしい。企業自身の存続と成長、株主利益レベルにおいては、法を守りつつもより柔軟性ある発想とアプローチが常に求められるべきだと考える。

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