体感温度の中国経済(2)~マイホームに対する執着心の罠

<前回>

 中国の不動産、前回は物件品質や価値の話をしたが、今回は供給と需要の話をしよう。ある統計によると、いま中国各地で建設された住宅は20~30億人分、つまりは2つ以上の中国の全人口を収容できるほどの規模である。2つや3つ、多いところ10個以上の不動産を所有している中国人も珍しくない。

 「商品房」という言葉がある。もともと80年代当時、住宅が計画経済時代の国家や企業による割り当て形式から市場売買取引に転換したときに、後者に属す物件を指す用語であった。しかし、いまの中国の不動産は相変わらず「商品」ではあるが、ただ、「住居商品」から「金融商品」「投資商品」へと変質したのである。正確に言うと、「投資機能」あるいは「投機機能」が「住居機能」を大幅上回っている。

 一般的な中国人中産階級の資産の7割か8割、あるいは9割以上を占めるのは不動産である。なかに負の資産として所有しているケースも少なくない。想像してみよう。不動産が仮に2~3割、あるいはもっと資産価値が下がった場合、このような中産階級はどうなるのか。

 中国各地、特に郊外の新興住宅地に続々とゴーストタウンが生まれている。よくある話だが、夜間明かりのつく戸数を数えればその実態が分かる。だが、住宅開発は止まらない。地方政府とデベロッパーが結託してどんどん建てている。土地転がしで収益を上げるのが一番手っ取り早い。

 供給過剰なら、市場メカニズムで需要が鈍るのではないかと。一向に鈍ることがないのは、中国人の不動産拘りである。

 私はいろんな中国人に、賃貸でいいじゃないかと勧めたことがあるが、「同じ金を払うのだから、賃貸じゃ、最後に何も残らないんじゃないか」と、一様な答えが返ってくる。土地所有権のない不動産を買って、20年かよくて30年でうわものの減価償却だけで、それこそ最後に何が残るかと。さらにいうと、中国語では、「貼現率」といって、割引率でいわゆる将来入るキャッシュの現在価格を図る指標もあるのだ。資産は流動性の高い現金から流動性の低い不動産に変わり、そのデメリット、機会損失・・・、こういった理論をどう説明しても理解してくれないのが大方の中国人である。

 中国人の「家」に対する執着心、伝統的価値観をうまく利用しているのは政府である。これは、洗脳よりはるかに簡単だ。最終的に土地資本を持つ政府が一番の勝者になり、次に銀行やデベロッパーなどの利権集団と一部の投機者である。

 最後に中国のGDPを占める不動産投資の比率をみれば、一目瞭然だ。本篇は、「体感温度」前提だから、あえて数字を引っ張ってこない。中国の不動産バブルは必ず崩壊する。あと数年ももたない。日本の不動産バブルの崩壊は、土地価格の下落だが、中国の場合は?

 「じゃ、立花さん、あなたなら、いくらだったら買うんですか」とよく聞かれるが、体感温度でいうと、いま中国の主要都市部の不動産で、現行実勢相場の5分の1から3分の1なら買ってもいいかなと。ただ、PM2.5のことを考えると、やはり買う気になれない。

<次回>

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