アジア居酒屋雑感、現地人名義貸しの飲食店経営の罠

 ホーチミンの夜は楽しい。レタントン通りにいけば、質の高い居酒屋がたくさんある。火曜日の夜、知人内輪の飲み会はレタントン酒場で盛り上がった。

160126-2032-HCMC-レタントン酒場

 ホーチミンは90年代半ばの上海に似ているというが、日本食に限って言えばあのときの上海よりはかなり進んでいる。何よりも日本人経営者が多い。90年代当時の上海は、日本人が経営する和食屋といえばわずか1軒や2軒しかなかった。いまはホーチミンに限らず、アジア中に日本人経営の店が溢れている。

 この20年、日本企業だけではなく、飲食業のアジア進出ぶりも凄まじい。外食専門コンサルも立派に成り立っているくらいだが、一点だけ気になることがある。ベトナムや中国は好例だが、レストランをやるなら現地人の名義を借りなければできないというのが通説になっている。

 これが間違っている。外国人の独資でもちゃんと法人を設立して経営できる。許認可関連は現地人経営者よりやや時間がかかるかもしれないが、リスクを考えれば断然独資(せいぜいJV)だと思う。名義貸しはトラブルのもとである。法的に名義を借りた人はオーナーではないので、逆に法的名義人(現地人)の売り上げを横取りすることになっているのだ。

 現地のコンサルや仲介者が、このような失敗事例やリスクをきちんとクライアントに説明しているかというと、かなり怪しい。名義貸しの場合、基本的に信託法に基づく法律関係になるが、ただそれが外国投資法と競合する場合、後者が上位になるリスクが断然大きい。こういった内情を隠して仕事を請ける弁護士もいれば、「悪徳」の名に値する。

 最近、ベトナムに飲食業を出したいという友人には、私は必ず外資企業にしようと助言している。