【時事解読】YKKローエンド戦略に拍手、「狼やってきた」中国企業が戦々恐々

 いよいよローエンド市場へ参入か。待ってましたと、YKKに拍手を送りたい。

 2017年3月16日付けの中国メディアが伝えたところによると、ファスナー大手のYKKが2770億円を投資してアジアのローエンド市場へ参入する。

 記事は、ファスナー大手のYKKが、中国メーカーとの熾烈な競争を強いられていると紹介。これに対応するためYKKは、最近発表した2020年計画の中で、アジア地区における低価格ファスナーの販売戦略を強化することを明らかにしたという。

 YKKは、2770億円を投資してスタンダード品のファスナー生産部門を設立する。記事や同社の発表によると、YKKはグループ全体の販売本数を2017年度の95億本から2020年度までに129億本にすることを目標にしており、これは2016年度のおよそ2倍にあたるという。

 さらに開発体制についても、強化を継続し、開発拠点を現在22拠点から2020年の41拠点に増設。開発人員も250名から2020年の1060名体制へと増員する。

 スタンダード品のファスナーは主に、衣服、カバン、流行のアクセサリーなどの製品に使用し、関係するメーカーは中国などアジアに分布している。そのため60%以上の投資が、重要性が増大し続けている中国とアジア市場に対するものになるという。

 YKKは、服飾メーカーが密集しているバングラデシュ、ベトナム、インドなどの国へ130億円を投資し、工場の生産能力を50%以上高めることにしている。また、中国とアジア地区における研究開発拠点を、現在の10か所から15か所に増やし、研究開発者の人数も40%増加して460名とする予定だという。(2017年3月16日付「Record China」記事、一部筆者による増補)

 まず、中国メディアの反応を見ると分かりやすい――。

 「ファスナー大手YKK、ローエンド市場で中国企業と争奪戦へ」
 「日本ファスナー大手YKKローエンド市場参入、国産品は戦々恐々?」
 「YKKのローエンド市場への浸透、どう対応するか?」
 「中国ファスナーメーカーへの衝撃が甚大・・・」

 ――中国的な表現でいえば、「狼来了」。「狼がやってきた」ということである。中国企業に恐れられる競争相手にならない限り、まず勝ち目がない。多くの日本企業は、中国企業に「羊」と見られた時点ですでにアウト。狼、強敵と認知されることは、勝利への第一歩だ。

 中国やアジア市場において、日本企業のローエンド戦略の欠落は1つの致命傷になっている。YKKの切り込みが成功すれば、日本企業の海外市場進出史上のマイルストーンになるだろう。

 優良な品質は、日本企業の得意分野だが、市場の需要を吟味したうえで、場合によっては「製品のダウングレード」も必要だ。言ってみれば、単に製品を粗末にするのではなく、ローエンド市場でのパフォーマンス増強に真剣に取り組むことである。今回YKKが発表したようなローカル市場に密着した製品開発と販売攻勢の強化はまさに、実務に即した戦略的思考によって裏打ちされたものである。

 報道を見た瞬間、私は思わず手を叩いてしまった。ブラボー!力強い狼になれ、YKK。

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