ペナン食い倒れ日記(11)~印料理「Kashmir」、商売魂と美食の両全

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 第6ラウンド。ペナン滞在3日目の夕食は、味覚に変化をつけようと、ホテルの近くにあるインド料理店「Kashmir」へ足を運ぶ。

 第一印象はやはり、インド人の商売魂の逞しさ。三角形の角地に位置する路面店というもともとの地の利では物足りない。なんと一周に店名の看板やサインを数えたら、大小合わせて10以上もあった。車だろうと歩行者だろうと、盲人以外はまず目につかないことはあり得ない。

 さらに店主のインド人おじさんはほぼ常時、店頭のテラスに張り込んでワインを飲みながら客引きをしているのだ。ただそれは決して下品な客引きではない。通りかかる人で少しでも立ち止まったり店内を覗いたりすると、すぐにさり気なく笑顔で挨拶してくる。

 店に入ると、否応なしにメニューを勝手に決めてくる。「うちの店は、とにかくタンドリーチキンが旨いんだよ。食べたら誰もが旨いというんだ。食べなきゃダメ。もし万が一まずかったら?そりゃあ、旦那あんた不味いと言ったら、タダでいい。一銭を取りません。絶対に取りませんから。はい決まり、タンドリー一丁」・・・。

 おいおい、調子乗りすぎだぞ。でもタンドリーチキンは拒否できなかった。彼のロジックはほぼ完璧だったからだ。旨いことの裏付け、不味かった場合の処理、そして「不味い」ことの定義・・・。客に拒否する理由を1つも残してくれなかった。「理」の世界では彼の完勝だった。先発の主導権もしっかり握られた。

 あとは、「情」の次元で本当に不味いといって、ただ食いするという心臓に毛が生えている客になりきれば、逆転できるかもしれないが、結果は残念ながら無理。タンドリーチキンは絶品だった。その後に出てくるラムチョップグリルも、マトンカレーも、ベジタブルカレーも、サフランライスも、ナンも、すべて文句なしの絶品だった。憎らしい店主だが、良店だった。

 マレーシアでは商売上手なのは少数民族の華人とインド人だというが、この両者には本質的な差異がある。この店の店主はむしろ典型的なインド流ではないかと思う。仕事には情熱的で自信家で、調子が良すぎるほど強引な営業姿勢だが、ちゃんとそれを裏付けるものがしっかりできているし、下品さや詐欺っぽさは皆無だ。

 脱帽。そしてご馳走様でした。

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