MM2Hはなぜ中止する必要があるのか?マハティール氏の胸中

 マレーシアのマハティール新政権が、この国で従来やってきた様々なことを改めようとしている。その中には、多くの日本人の個益にかかわるマレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)、いわゆる移住政策・制度の見直しも含まれている。

 私は個人的に、MM2Hの中止あるいは条件の大幅引き上げもあると見ている。私がボランティアで運営している「マレーシア移住の会」のサイトでこれを書いて投稿したら、「根拠は何だ」と聞かれた。根拠は日々接してきた情報や事実の積み上げとこれらをつなげる分析や推論といった前工程をベースとしたもので、すべて再現するにはあまりにも時間とコストがかかるから、省いておこう。ここでは2つのポイントを断片的な材料として記しておきたい。

 1つは、「根拠」というのだから、逆にMM2Hを継続する根拠とは何だと問いかけたい。言ってみれば、マレーシアの国益に何の貢献があるのか、費用対効果つまりそのコストパフォーマンスはいかがなものかという質問である。

 利益以前にまずリスクをいうと、中国人がこの制度に便乗してマレーシアで不動産を買い漁って、バブルを作ったところでその被害者はほかでなく、相対的に貧しいマレーシア国民ではないか。さらにいうと、税金も取れない外国人ジジババがマレーシアに住んでも、せいぜいわずかな賃貸料や生活費、ゴルフプレイ代くらいでたかが知れている。

 もう1つの材料は、マハティール自身の言動だ。数多くある中で1つを上げるとすれば、彼は今年(2018年)5月に新政権の組閣の際に、首相に就任しながらも教育大臣も兼務すると一旦発表したことだ。後日公約違反との批判を受けて撤回したものの、なぜ公約違反のリスクを冒しながら、マハティール氏が教育大臣を兼任しようとしたのか。

 マハティール氏は、この国を根本的に変え、永遠のライバルであるシンガポールに追いつくために、その唯一の方法は「教育」だとそう強く確信しているに違いない。つまり国益に真の貢献と寄与ができるのは、シニアではなくジュニアなのだ。マハティール首相は、教育大臣を務める理由として、「国の教育制度を変える必要がある」とも語った。

 故に、マレーシアは根本的に変わろうとしているのである。