JETROエコシステムツアー(1)~スタートアップ企業を育てる施設と制度

 11月15日(木)、ジェトロ・クアラルンプール主催の「Bangsar Southエコシステムツアー」に参加。

 Bangsar Southは近年開発されたばかりのエリアでフィンテック、ビッグデータ、ゲームなどの分野のスタートアップ企業が集結し、サイバージャヤと並んでいわゆるマレーシアのシリコンバレーである。

 スタートアップを主題とするツアーで、政府系デジタル産業支援機関であるマレーシア・デジタル・エコノミー公社(MDEC)が運営するワーキングスペースを訪問し、MDECとMaGIC(政府系スタートアップ支援機関)の説明セミナーも行われた。

 予想以上に奇麗なオフィスだった。マレーシア政府は本気のようだ。マレーシアという国はなかなか経済発展がしない。豊富な資源を有し、国民ものんびりする人が多く、がつがつと奮闘する様子があまり見られない。このままでは中所得国の罠に陥って抜け出せなくなる。そこで何かしなければならない。隣のシンガポールの成長はITに支えられる部分が大きく、シンガポールと競争していくにも、デジタル産業への注力はもはや唯一に近い手段となる。

 話を戻すが、視察先となる施設もシステムも優れている。スタートアップ企業は市場相場を大きく下回る格安料金で入居、利用できる。当初はコーワーキングスペースという共同オフィスを使うが、事業が「サクセスフル・ケース」(成功案件)となれば、プライベート・オフィスに引っ越し、増員・拡張できるようになっている。

 では、「成功案件」とは何か。どうやら売上高(営業利益ではない)100万リンギット(約3000万円)が評価基準になっているようだ。いってみれば、それほど高いハードルではないように思える。

 とはいっても、マレーシアのデジタル産業はこれまでGrab社など一部の事案を除いて、平均的に顕著な発展があったとはいえない。その阻害要因とは何であろうか。

<次回>

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