ハロン湾クルーズ(5)~昼下がりの赤ワインと葉巻

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 12月1日(土)、ハロン湾クルーズ2日目。用意された上陸観光やサイクリング、カヤックなどのアクティビティには一切参加せず、船内に残ることにした。

 ハロン湾クルーズには概ね、日帰り、1泊2泊と2泊3日という3つのパターンがある。ハノイ市内発着の急行軍日帰りツアーはさすがにあまりにも慌ただし過ぎるという観光客は、通常1泊2泊のパッケージに参加する。ただ2泊3日の客は非常に稀のようだ。乗客名簿をちらりと見たところ、立花家族の1グループのみだった。

 ハロン湾の地理からいうと、2泊3日を要するほどの長距離クルーズではない。ゆったりした乗船体験とリラックスタイムを求める少々奇人変人的な客がほとんどであるためか、マネージャーもかなり心得ているようだ。アクティビティの参加をまったく勧めてこないし、逆に船内マッサージなどゆったり過ごすための提案をしてくるほどだ。

 実際にはクルーズの2日目の昼前に、船が一旦港の船着場に戻ってくる。1泊の乗船客を下ろし、次の1泊客を新たに乗せて出港する。要するに2泊3日といっても、ほぼ同じ航路を2往復するだけということだ。客の降り乗りの隙に1時間ほどの空白があって、その空白を利用してなんと2泊の客に無料マッサージを提供するという特典が用意されているのである。それは有難い。

 昼12時半過ぎたころ、新たな乗客が船に乗り込んでくる。乗客の顔ぶれは、前日の韓国人団体から欧米人の個人客に変わり、マンウォッチング好きの私にとって嬉しい変化である。日本人客はほかにまったくいない。そういえば、最近ベトナムではアジア系の観光客といえば、韓国人。どこから湧いてくるかのように大量の韓国人がベトナムに殺到している。

 13時、クルーズ船は出港し、前日と同じ航路を辿って航海をはじめる。昼食のメニューだけは変わった。前日は魚介類だったが、今日は肉になった。ゆっくり食事を取り、午後もフリータイムなので、今日もワインを1本空ける。夜はブッフェなのだから、ワインよりも水で十分である。

 昼食が終わると、ほろ酔い気分で部屋に戻り、葉巻の一服を楽しむ。喫煙規制がまだ緩やかなベトナムでは、たとえば船内でもキャビンの客室内には禁煙だが、テラスにはちゃんと灰皿が用意されているのだ。肉料理と赤ワインの後の葉巻は旨い。チョコレートやバニラ、ナッツ、ラム、スパイスなど、葉巻と赤ワインは香りの種類で共通するものが多く、素晴らしいマリアージュを生み出すのである。

 素晴らしい船旅である。

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